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有機・高分子合成における脱"レアメタル"触媒の開発動向

リビングラジカル重合、カップリング反応における鉄・非遷移金属触媒技術を詳解する

有機・高分子合成における脱"レアメタル"触媒の開発動向

東京都 開催 会場 開催

概要

本セミナーは脱レアメタル触媒のセミナーを2テーマセットにしたコースです。
セット受講で特別割引にてご受講いただけます。
通常受講料 : 94,500円 → 割引受講料 84,000円

開催日

  • 2011年1月27日(木) 13時00分 16時35分
  • 2011年1月28日(金) 11時00分 17時05分

受講対象者

  • リビングラジカル重合法による応用分野に関連する技術者
    • エラストマー
    • 接着剤
    • ポリマーアロイ
    • レジスト
    • コーティング
    • 塗料
    • インク
    • 界面活性剤
    • 分散剤
    • 化粧品
    • 潤滑剤
    • 電子・光学材料分野
    • 力学・分離・潤滑材料分野
    • 生体・医療材料分野 など
  • 有機材料、高分子材料の合成に関連する技術者

修得知識

  • レアメタルを用いない触媒の開発動向
  • リビングラジカル重合の低コスト化
  • 非レアメタル触媒を利用したカップリング反応の基礎
  • 鉄触媒・ヨウ素によるクロスカップリングの基礎

プログラム

2011年1月27日「リビングラジカル重合用 脱“希少金属・貴金属“触媒の開発」

第1部 (13:00~14:00)

均一系鉄触媒の開発研究
~基礎化学から分離回収再利用可能な原子移動型リビング重合用触媒系まで~

 今年度を含め過去10年間の少なくとも3つのノーベル化学賞には、金属錯体触媒の化学が大きく係わっている。錯体触媒の特徴は、溶液中で進行する他の有機反応では達成できない反応を多く実現するだけでなく、金属あたりの活性が高く、触媒となる有機金属分子の設計次第で反応の選択性を自由自在に制御することが可能である。
 一方において、現代の資源制約下で高価な貴金属の使用に限界が出ていること、および、金属の生成物からの分離回収が大きな課題となっている。鉄は生体に必須な元素であり、安全で環境負荷を与えない。また、地球上に広く分布して多量に存在しており、安価である。このため、鉄錯体触媒は今後の有機合成、高分子合成における大きな課題となっている。
 本講演では、この鉄錯体触媒の開発研究を、鉄錯体の基礎化学と研究手法を例をあげて解説する。とくに、具体例として原子移動型ラジカル反応用触媒の開発を錯体触媒の設計、合成、同定から機能開発にいたる研究を紹介することにより、鉄触媒開発の指針を示す。

  1. 鉄錯体の基礎化学
    1. 元素としての鉄の特性と将来性
    2. 鉄錯体の基本的性質
    3. 鉄錯体のスペクトルと構造解析
    4. 鉄錯体触媒の設計法と素反応解析 (カップリング反応機構、アルキンのビスシリル化を例に)
  2. 鉄錯体触媒開発の実際例~リビング重合系の開発
    1. ATRP (原子移動型ラジカル反応) 概説・触媒に求められる条件
    2. 1,4,7-トリアザシクロノナン (TACN) の配位子への利用 (1)
      ~ Me3TACNを配位子とするFe (II) 錯体の開発と回収再利用可能なATRP触媒への展開 ~
    3. 1,4,7-トリアザシクロノナン (TACN) の配位子への利用 (2)
      ~ iPr3TACNを配位子とする高活性Fe (II) 錯体の開発と少ない触媒量での重合 ~
    4. より実用的な系を求めて~Fe (III) 錯体を利用するには
  3. まとめと将来展望:次世代触媒・触媒プロセスとしての生元素触媒完全回収系
    • 質疑応答
第2部 (14:55~16:35)

非遷移金属触媒を用いたリビングラジカル重合の低コスト化技術

 近年、リビングラジカル重合法が、最先端分野に用いられる高付加価値高分子を製造する精密重合法として注目されている。
 例えば、エラストマー、接着剤、ポリマーアロイ、レジスト、コーティング、塗料、インク、界面活性剤、分散剤、化粧品、潤滑剤、電子・光学・力学・分離・潤滑・生体・医療材料分野等への利用が期待されている。

 私共は、最近、汎用の安価で低毒性のリン、窒素、アルコール、炭素化合物がリビングラジカル重合の優れた触媒として作用することを発見し、各種の機能性モノマーの重合を制御している。触媒は、取扱いが容易で、重合は簡便です。経済性、環境安全性、簡便性に優れると期待しえる。

 本講座では、この重合法を解説し、有機触媒の活性やその長所、実用化への技術的な課題等について、紹介したいと思う。

  1. リビングラジカル重合 (LRP) の概要
    1. リビングラジカル重合の概要
    2. リビングラジカル重合の動向
    3. 想定される用途
    4. 鍵となる素反応からみたリビングラジカル重合
  2. 有機触媒を用いたリビングラジカル重合
    1. 概念
    2. 各種の触媒
    3. 各種のモノマー
    4. ランダム・ブロック共重合
    5. 開始種 (ドーマント種) の重合中in situ合成
    6. 表面開始グラフト重合
    7. 分岐高分子
    8. 反応速度論的研究-反応機構の確定と触媒活性の定量的評価
    9. 本重合の長所
    10. 本重合の技術的課題
    • 質疑応答

2011年1月28日「脱“レアメタル“カップリング反応の最前線」

第1部 (11:00~12:40)

鉄触媒によるクロスカップリング反応の研究動向と今後の展望

 有機化合物の精密合成において、ニッケル、銅、パラジウム、ロジウムなどの遷移金属はそれぞれ特異な反応性、触媒活性を示し、 大変な活躍ぶりを示す。
 これらの金属は、地殻中に数十ppmから数ppbの存在量しか無い「希少元素」であり、産業分野全体からの現在の需要に対しては数十年から数百年の耐用年数 (石油で言うところの可採年数) が見積もられている。

 我々の研究グループでは、10年ほど前から普遍性の高い金属を活用する精密有機合成反応の開発に取り組んでいる。始まりは、「希少金属の触媒機能を、鉄のような身近な遷移金属で代替することは可能か?」「普遍性の高い金属の触媒で希少金属触媒の機能を凌駕することは出来ないだろうか?」といった素朴な疑問・挑戦だった。
 卑金属鉱石から金を精錬しようとした古の錬金術師に自らの姿を重ね合わせながらのスタートではあったが、最近我々の開発してきた鉄および鉄族元素触媒によるクロスカップリング反応が、パラジウムやニッケルを触媒としたクロスカップリング反応とは異なる反応機構で進行していることが明らかとなってきた。

 本講演では、「元素科学」や「元素戦略」を念頭に置いた均一系触媒反応開発の一例として、鉄を触媒としたクロスカップリング反応の開発について、我々のこれまでの成果をまとめて紹介したいと思う

  1. はじめに
  2. 鉄触媒アルキル/アリールクロスカップリング反応
    1. 化学量論量の配位子および添加剤による反応制御
    2. 触媒量の配位子による反応制御
  3. 触媒によるアリール/アリールクロスカップリング
  4. おわりに
第2部 (13:20~15:00)

鉄-シリル錯体に秘められた驚異の触媒能

 鉄は地表部に最も多く存在する遷移金属であり、地球上に広く分布している。そのため、常に安価で安定的に供給できるという特徴を有している。しかし、良い触媒能を示す鉄の錯体はあまり知られていない。
 高い触媒能を示す金属の代表として白金があげられる。ところが白金は高価であり、さらに世界中で産出される92%が南アフリカとロシアに偏っているため、経済的・政治的理由で供給が途絶える危険性をはらんでいる。
 白金に限らず、他の安定的供給に問題のある金属を用いた触媒反応からなるべく早く脱却することが、産業の持続的発展には欠かせない。従って、これらの代替金属として鉄が利用できればそのインパクトは大きい。

 鉄を中心金属として、その配位子や反応条件等を種々工夫することにより、鉄錯体に高い触媒能を発現させ、さらに鉄錯体に特有の触媒反応を開発することが可能ではないかと考え、我々は鉄錯体を触媒とする反応を種々検討している。

 本講演では、シリル基を配位子とする鉄錯体に秘められた触媒能について、我々がが見出してきた反応を中心に解説する。

  1. 鉄の特徴について
  2. 鉄錯体について
  3. シリル基を有する鉄錯体による強い結合の切断反応
    1. 有機ニトリルのC-CN結合切断反応
    2. なぜ鉄シリル錯体でなければいけないのか
    3. 鉄錯体の触媒反応への展開
    4. シアナミドのN-CN結合切断反応
  4. 鉄錯体による脱水素カップリング反応
    1. ヒドロシランの脱水素カップリング反応
    2. ヒドロゲルマンの脱水素環化反応
    3. ヒドロゲルマン、ヒドロシランの脱水素ヘテロカップリング反応
  5. まとめ
第3部 (15:15~16:55)

ヨウ素反応剤を用いた 脱レアメタル-カップリング反応

 平成22年度のノーベル化学賞で話題となった、パラジウム触媒を用いたクロスカップリング反応は、有機金属を用いた反応の中でも最も重要なものの一つです。本反応は、機能性色素、医薬品、有機エレクトロニクス領域で重要な反応であるが、レアメタルを用いているので、特定産出国への依存度が高く、価格や供給面での問題が残っている。一方、我々が開発したヨウ素反応剤を用いるカップリング反応では、ヨウ素が日本が世界第2位の産出国であり、さらに、あらかじめ結びつける芳香環上に亜鉛やホウ素などの官能基化が不要なために、工程が簡略化され効率も高まり、製造コストの削減も期待される。
 本講演では、これらの反応の開発に至った背景から、最近の芳香環化合物やヘテロ芳香環化合物間のレアメタルを用いないカップリング反応について述べる。

  1. 環境調和型反応の開発
    1. 毒性の強い重金属酸化剤の代替
    2. 含フッ素アルコール溶媒の重要性
  2. ヨウ素反応剤による新反応の開発
    1. 基礎反応の開発
    2. 重要生物活性天然物合成
  3. 反応機構の考察
    1. 含フッ素アルコール中でのカチオンラジカル生成
    2. ヨードニウム中間体の生成
  4. 不斉合成への応用
  5. クロスカップリング反応
    1. フェノール誘導体におけるカップリング反応
    2. フェニルエーテル誘導体におけるカップリング反応
    3. 芳香環化合物間のカップリング反応
    4. ヘテロ環化合物におけるカップリング反応とその応用
  6. まとめ
    • 質疑応答

講師

  • 2011年1月27日「リビングラジカル重合用 脱“希少金属・貴金属“触媒の開発」
    • 第1部 講師
      九州大学 教授 永島 英夫 氏
    • 第2部 講師
      京都大学 准教授 後藤 淳 氏
  • 2011年1月28日「脱“レアメタル“カップリング反応の最前線」
    • 第1部 講師
      京都大学 教授 中村 正治 氏
    • 第2部 講師
      大阪市立大学 教授 中沢 浩 氏
    • 第3部 講師
      立命館大学 教授 北 泰行 氏
  • 永島 英夫
    九州大学 先導物質化学研究所 分子集積化学部門
    教授
  • 後藤 淳
    京都大学 化学研究所
    准教授
  • 中村 正治
    京都大学 化学研究所 附属元素科学国際研究センター
    教授
  • 中沢 浩
    大阪市立大学 大学院 理学研究科
    教授
  • 北 泰行
    立命館大学 薬学部
    教授

会場

東京ビッグサイト

会議棟 6階 609会議室

東京都 江東区 有明3-11-1
東京ビッグサイトの地図

主催

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お問い合わせ

本セミナーに関するお問い合わせは tech-seminar.jpのお問い合わせからお願いいたします。
(主催者への直接のお問い合わせはご遠慮くださいませ。)

受講料

1名様
: 80,000円 (税別) / 84,000円 (税込)
複数名
: 73,000円 (税別) / 76,650円 (税込)

趣旨

 有機合成、高分子合成において、パラジウムやロジウム、、銅などが持つ触媒機能は欠かせないものになっています。しかし、こうした金属は、埋蔵量が少なく、高価なことが大半です。限られた需要を見据えるといった意味合いからも、また、低コスト化を推し進めるといった意味合いからも、「希少金属・貴金属触媒を普遍金属、もしくは非遷移金属触媒に代替する」というのは、現代産業界の一大テーマであると言えるでしょう。
 本セミナーでは、1日目を、リビングラジカル重合、2日目を、カップリング反応に絞り、鉄触媒、もしくは非遷移金属触媒の研究動向について、その最前線で活躍する総勢5名の研究者が解説します。触媒研究者・開発者はもちろん、触媒を利用する産業全ての研究者・開発者にとって、必見の内容となっています。

複数名同時受講の割引特典について

  • 2名で参加の場合1名につき 7,350円割引
  • 3名で参加の場合1名につき 10,500円割引 (同一法人に限ります)
本セミナーは終了いたしました。

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