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水電解用電極触媒の開発動向と高活性化、安定性向上技術

水電解用電極触媒の開発動向と高活性化、安定性向上技術

~非貴金属を利用した新しい触媒開発と水電解技術の最新動向~
オンライン 開催

開催日

  • 2024年9月5日(木) 10時15分 16時40分

修得知識

  • 水素及び水素エネルギー
  • 水電解
  • Power-to-Gas
  • アルカリ水電解
  • 固体高分子水電解
  • 電極触媒
  • アルカリ中での水電解に求められている電極触媒の性能
  • 菱面体硫化ホウ素の合成方法
  • 菱面体硫化ホウ素の物性の評価方法・測定結果
  • 菱面体硫化ホウ素とグラフェンが示す酸素生成反応 (OER) に対する高い電極触媒性能
  • 担体としてニッケルフォームを用いることで実現する電極触媒の高安定性化
  • PEM型水電解技術の基礎知識、特徴および課題
  • 非貴金属触媒を用いたPEM型水電解の研究現状と世界的な課題
  • 酸化マンガン触媒の特性や劣化機構、安定領域
  • 酸化マンガン触媒の安定性向上技術とその構造制御
  • 「機械学習力場」の概念・作成方法・応用に関する基礎知識
  • 水分解触媒開発への第一原理計算の活用方法
  • 多数の元素を含む物質を起点とした触媒探索戦略

プログラム

第1部 水素社会を担う水電解及びその電極触媒の基礎、現状及び動向

(2024年9月5日 10:15〜11:45)

 カーボンニュートラル社会の要望に伴って、水素エネルギーへの関心が高まり、関連の技術開発は非常に重要な位置づけとなっています。その中でカーボンニュートラルに水素を製造するデバイスとして水電解が注目されています。
 本講座では水素と水電解の関係、また水電解、アルカリ水電解及び固体高分子形水電解の原理、現状などを紹介していきます。併せて、水電解の中で重要な役割を果たす電極触媒についても原理、現状と課題も併せて紹介・解説して致します。

  1. 緒言
    1. 地球温暖化の影響、現状、補足
    2. SDGsと大学
  2. 水素エネルギーとグリーン水素
    1. 水素エネルギーの背景、動向、水素基本戦略
    2. 水素エネルギーの現状 (水素閣僚会議)
  3. 水素と水電解
    1. 水素の製造法、単位、貯蔵輸送
    2. 水素の貯蔵・輸送プロジェクト、グリーン水素
    3. 水電解の基礎
      • 学問分野
      • 種類
      • 原理
      • 歴史
    4. 水電解の現状と動向
  4. 水電解による水素製造
    1. 日本におけるPower-to-Gas実証の紹介
    2. グリーン水素に向けた水電解の方向性と海外の導入状況
    3. アルカリ水電解、固体高分子形水電解の電極触媒の動向と現状
  5. まとめと今後の展望
    • 質疑応答

第2部 典型元素を利用した高活性アルカリ水電解触媒の開発

(2024年9月5日 12:30〜13:40)

 温室効果ガスの排出量と吸収量が均衡したカーボンニュートラル社会の実現のためには、化石燃料の利用率の低減だけでなく、太陽光発電や風力発電などで生成した再生可能エネルギーを効率よく利用しなければならない。さらに、再生可能エネルギーを利用して水を電気分解 (水電解) することで得られる水素 (グリーン水素) の活用も重要である。水電解は水素生成反応 (HER) と酸素生成反応 (OER) の2つの電極反応によって実現される。一般的に2電子反応であるHER (アルカリ中での反応:2H2 O + 2e-→ H2 + 2OH-) よりも4電子反応であるOER (アルカリ中での反応:4OH-→ O2 + 2H2 O+ 4e-) の方が反応速度が遅い。このため、水電解を効率よく行うためには特にOERを促進する電極触媒が重要となる。現在、OER触媒として酸化ルテニウムや酸化イリジウムといった希少で高価な貴金属の酸化物が使われている。しかし、安定したグリーン水素の利用と普及のためには、埋蔵資源量が豊富で安価に入手可能な元素を利用した、新しい触媒の開発が重要となっている。
 このような中、我々は最近、ホウ素と硫黄で構成される菱面体硫化ホウ素 (r-BS) とグラフェンナノプレート (GNP) の混合体が、市販の酸化ルテニウムを上回る高いOER活性を示すことを見出した。その後の密度汎関数法等による解析により表面から3層目にあるホウ素欠損部が活性点を形成していることが示された。さらに、最近r-BSとGNPの混合体をさらにニッケルフォーム (NF) に担持すると長時間使用で電極から触媒が剥がれてしまうという問題が改善され、高電流密度での100時間以上の連続運転でも劣化しないことが示された。本講座ではこの研究成果を中心に紹介する。

  1. 研究背景
    1. 水素を利活用するために必要な材料開発
    2. アルカリ水電解に必要な電極触媒
    3. 触媒と電子状態 (金属のd-banndで議論されるボルケーノプロット)
  2. 典型元素を利用したアルカリ水電解触媒の開発
    1. 菱面体硫化ホウ素 (r-BS) という物質
    2. r-BSの合成方法
    3. r-BSの結晶構造、結合、バンドギャップ、熱的安定性、光学吸収・発光などの物性
    4. r-BSナノシートの合成とバンドギャップの制御
    5. r-BSのp型半導体としての機能
    6. r-BSとグラフェンの混合物が示す酸素生成反応 (OER) に対する高い電極触媒性能
    7. r-BSとグラフェンの担体としてニッケルフォームを用いることで実現した更なる高安定性化
  3. まとめ
    • 質疑応答

第3部 PEM型水電解用酸化マンガン触媒の設計と安定性向上

(2024年9月5日 13:50〜15:10)

 水素はクリーンで持続可能なエネルギー源として、現在大きな注目を集めています。その製造技術の進展は、環境保護と持続可能なエネルギー社会の実現に不可欠です。
 本講座では、特にPEM水電解技術を用いた水素製造に焦点を当て、その基礎から重要な課題までを紹介します。非貴金属触媒の重要性と最新の研究動向に踏み込み、特に高い電流密度が求められるPEM環境下での溶解問題に対する具体的な解決策として、酸化マンガン材料に特化して紹介します。さらに、酸化マンガン触媒の特性、劣化機構、安定性向上技術について詳述し、PEM型水電解への応用可能性と未来展望についても議論します。この講座を通じて、非貴金属触媒による水電解に関する最新の知識を得るだけでなく、持続可能なエネルギー社会の実現に向けた新たな知見と洞察を深めることができるでしょう。

  1. 研究の動機
  2. 水素製造と水電解技術
    1. 水電解技術の種類、特徴
    2. PEM型水電解の課題、解決策
  3. 非金属触媒を用いたPEM型水電解の研究現状
    1. 世界的な研究課題
    2. 直面している挑戦
  4. なぜ酸化マンガン材料
    1. 酸化マンガン材料の特徴
    2. 劣化機構の解明
    3. 安定領域の確定
  5. 酸化マンガン触媒の安定性向上技術
    1. 酸化マンガンの構造制御
    2. 安定性因子の解明と安定性向上
    3. PEM型水電解システムでの特性評価
    4. 酸化マンガン触媒への期待、展望
  6. PEM型水電解の将来展望
    • 質疑応答

第4部 卑金属のみを用いたPEM型水電解用酸素発生電極の設計と性能評価

(2024年9月5日 15:20〜16:40)

 水を電気分解するための触媒としてはPtやIrが適していることが知られているが、その希少性のため、ありふれた元素で代替する必要がある。しかし、無数にある元素の組み合わせの中から適切な触媒を見出すことは困難である。
 本セミナーでは、多くの元素を含む卑金属合金をベースに高性能な水分解触媒を探索する試みについて、第一原理計算と機械学習の観点を中心に解説する。

  1. 水電解の背景
    1. なぜ卑金属搭載固体高分子型水電界か
    2. 水の電気分解の仕組みと触媒の学術研究動向
    3. 卑金属と腐食
    4. 卑金属電極触媒の開発戦略
  2. 高エントロピー合金触媒の作製と評価
    1. 合金の作製
    2. 電気化学X線測定による評価
    3. 触媒性能評価
  3. 第一原理計算を用いた触媒性能評価
    1. 密度汎関数法のごく簡単な説明
    2. 第一原理計算と遷移状態計算
    3. 遷移状態計算を用いない触媒活性評価
    4. 酸素発生反応の活性評価方法
  4. 機械学習力場を用いた触媒性能評価の加速
    1. 機械学習力場の必要性
    2. 機械学習力場概論:カーネル回帰とニューラルネットワーク
    3. 9元合金の機械学習力場の構築
    4. 機械学習力場を援用した触媒活性評価
    • 質疑応答

講師

  • 松澤 幸一
    横浜国立大学 大学院 工学研究院 機能の創生部門
    准教授
  • 近藤 剛弘
    筑波大学 数理物質系 物質工学域
    教授
  • 孔 爽 (Shuang Kong)
    国立研究開発法人 理化学研究所 環境資源科学研究センター 生体機能触媒研究チーム
    研究員
  • 大戸 達彦
    名古屋大学 大学院 工学研究科 材料デザイン工学専攻 計算材料設計講座
    准教授

主催

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