技術セミナー・研修・出版・書籍・通信教育・eラーニング・講師派遣の テックセミナー ジェーピー

治験の臨床検査値における軽微変動が意味するもの / 有害事象判定

改訂版

治験の臨床検査値における軽微変動が意味するもの / 有害事象判定

~カルテの見方と併存疾患の取扱いとその経時変動の解釈~
治験の臨床検査値における軽微変動が意味するもの / 有害事象判定の画像

概要

本書は、臨床治験における軽微変動と有害事象判定について、併存疾患・併存症状、症例報告書作成における問題と対応などを具体例を交えて詳解しております。

ご案内

 新薬開発の過程では多かれ少なかれ、肝障害や腎障害などの副作用、および目的とする薬効以外の薬理効果が出現する。これらをモニターして、新薬の臨床での有用性を明らかにする臨床治験において、血液検査データの追跡は欠かすことのできないものである。
 軽度な検査データの変動は確実に起きる。その際、GOTの上昇を見たら、それだけで肝臓障害と報告、BUN高値をみたら腎障害と報告など、障害臓器を短絡的に特定してしまうと、過度に有害事象との判定を行うこととなるし、また、場合によっては、真の障害を見逃す恐れすらある。
 検査データから、生体の状態を予測するためには、検討している検査データが生体の代謝経路のどの段階に位置するのかを正確に理解する必要がある。有害事象を予測させる検査データを検出した際に、生体機能障害の病態生理・生化学的な解析を行うための知識を習得する必要がある。
 また、臨床の現場でモニターを行っていると、基準値の問題に必ず出会う。基準値から外れていたら、ただちに異常としてよいのか、また、そのような場合に臨床医のコメントを受けると、生理的変動であると言われるなど、悩ましい場面が多くある。症例毎に判断は異なるのであるが、個々の基準値がどのように決められているのかを理解することで、判断をする助けとなる。
 治験において治験薬の対象疾患以外に併存している疾患の症状は、時に有害事象の判定を難しくさせる。この節では、治験中の併存疾患、併存症状について、症例報告書作成にあたりどのような問題点が発生する可能性があるか、どのように処理するか、処理に苦慮した具体例をいくつか紹介したい。

目次

第1章 治験における臨床検査値の軽微変動が意味するもの

  • 1. 基準値,人為的な異常値,パニック値
    • 1.1 基準値とカットオフ値の設定法
      • 1.1.1 基準値の設定
      • 1.1.2 検査値は正規分布する
      • 1.1.3 基準範囲を設定するための標本
      • 1.1.4 生理的変動
      • 1.1.5 カットオフ値の設定
    • 1.2 感度と特異度
      • 1.2.1 感度と特異度の算出
      • 1.2.2 ROC 曲線 Receiver Operating Characteristic curve
    • 1.3 基準値を外れていたら
      直ちに身体異常を考慮しなくてはならない検査データは何か
    • 1.4 人為的な検査値の変動
    • 1.5 パニック値
    • 1.6 採血の注意点
    • 1.7 軽度な異常値を見たとき
  • 2. 炎症反応
    • 2.1 炎症発生時の生理的応答
    • 2.2 炎症マーカー (急性相蛋白) の上昇機序:
      CRP と赤沈 (血沈) の関連
    • 2.3 代表的な炎症マーカー
      • 2.3.1 インターロイキン-1 (IL-1)
      • 2.3.2 インターロイキン-6 (IL-6)
      • 2.3.3 インターロイキン-10 (IL-10)
      • 2.3.4 腫瘍壊死因子 TNF α
      • 2.3.5 CRP
      • 2.3.6 赤沈
      • 2.3.7 ハプトグロビン
      • 2.3.8 フィブリノゲン
      • 2.3.9 α 1-アンチトリプシン
      • 2.3.10 セルロプラスミン
      • 2.3.11 血清アミロイドA (Serum Amyloid A:SAA)
      • 2.3.12 α 1 酸性糖タンパク
      • 2.3.13 プロカルシトニン (PCT)
      • 2.3.14 ヘプシジン
  • 3. 薬物の有害反応
    • 3.1 薬物の代謝と排泄
    • 3.2 有害作用発生機序
      • 3.2.1 細胞毒性
      • 3.2.2 免疫学的機序
      • 3.2.3 クームステスト 抗グロブリン試験
      • 3.2.4 DLST (Drug-induced lymphocyte stimulation test) 薬剤によるリンパ球刺激試験
      • 3.2.5 薬剤の有害反応による代表的な検査値異常
  • 4. 肝機能検査
    • 4.1 肝臓の組織
    • 4.2 エネルギー産生
      • 4.2.1 エネルギー産生の全体像
      • 4.2.2 LDH の役割
      • 4.2.3 脂質をエネルギー源とする場合
      • 4.2.4 飢餓状態でのエネルギー産生
      • 4.2.5 糖尿病では,ケトン体を利用できない
      • 4.2.6 エネルギー産生経路のまとめ
    • 4.3 解毒機能
      • 4.3.1 解毒とは
      • 4.3.2 アンモニアの処理,尿素サイクル,AST (GOT) , ALT (GPT) の働き
      • 4.3.3 ビリルビンの代謝
      • 4.3.4 シトクロームP450 (CYP) による薬剤の代謝
      • 4.3.5 肝臓では,ステロイドホルモンも代謝・排泄している
    • 4.4 蛋白合成能
    • 4.5 胆汁の合成
    • 4.6 薬剤性肝障害
    • 4.7 肝機能関連検査項目
      • 4.7.1 総蛋白
      • 4.7.2 アルブミン
      • 4.7.3 A/G 比 アルブミン/ グロブリン比
      • 4.7.4 AST (GOT) とALT (GPT)
      • 4.7.5 LDH
      • 4.7.6 コリンエステラーゼ
      • 4.7.7 尿素窒素
      • 4.7.8 ビリルビン
      • 4.7.9 アンモニア
      • 4.7.10 ALP アルカリホスファターゼ
      • 4.7.11 γ -GTP γ – グルタミルトランスペプチダーゼ
      • 4.7.12 LAP ロイシンアミノペプチダーゼ
      • 4.7.13 5’- ヌクレオチダーゼ 5’ribonucleotide phosphohydrolase
  • 5. 腎機能検査
    • 5.1 ホメオスターシス異常の検査結果の読み方
      • 5.1.1 酸塩基平衡
      • 5.1.2 アシドーシスとアルカローシス
      • 5.1.3 アニオンギャップ
      • 5.1.4 電解質の異常
      • 5.1.5 Na イオン
      • 5.1.6 K イオン
      • 5.1.7 Ca イオン
      • 5.1.8 Cl イオン
    • 5.2 腎機能検査
      • 5.2.1 腎による水と電解質バランス調節機能
      • 5.2.2 腎の内分泌能
    • 5.3 腎機能障害
      • 5.3.1 腎機能が障害を受けた際の症状
      • 5.3.2 尿毒症とは
    • 5.4 腎機能検査
      • 5.4.1 初めにチェックする項目
      • 5.4.2 BUN (血清尿素窒素) と血清クレアチニン濃度
      • 5.4.3 尿でみる腎機能異常
      • 5.4.4 腎臓の部位別の機能検査
    • 5.5 腎障害の早期検出にはどのような検査が適切か
      • 5.5.1 薬剤性腎障害の種類
      • 5.5.2 尿蛋白 尿アルブミン
      • 5.5.3 クレアチニンクリアランス (CCr)
      • 5.5.4 尿中β2- ミクログロブリン (β2-MG) 値
      • 5.5.5 尿中NAG (N-acetyl- β -D-glucosaminidase)
      • 5.5.6 血清シスタチンC (Cys-C)
  • 6. 血液検査
    • 6.1 貧血の判断
      • 6.1.1 赤血球恒数
      • 6.1.2 鉄の代謝と検査
      • 6.1.3 網赤血球 (Reticulocyte)
      • 6.1.4 エリスロポイエチン
      • 6.1.5 症候性貧血 (続発性貧血)
      • 6.1.6 薬剤による貧血
      • 6.1.7 溶血時の検査
    • 6.2 出血傾向の検査
      • 6.2.1 出血傾向とは
      • 6.2.2 血液凝固経路のポイント
      • 6.2.3 血液凝固の検査
    • 6.3 DIC
      • 6.3.1 DIC の発生機序
      • 6.3.2 DIC の検査
    • 6.4 薬剤による凝固異常
      • 6.4.1 薬剤性血小板減少とは
      • 6.4.2 ヘパリン起因性血小板減少症 (Heparin induced Thrombocytopenia;HIT)
      • 6.4.3 血小板機能障害
      • 6.4.4 凝固因子への障害
  • 7. 筋肉障害
    • 7.1 横紋筋融解症
    • 7.2 筋肉細胞破壊マーカー
      • 7.2.1 クレアチンキナーゼCK
      • 7.2.2 ミオグロビン
      • 7.2.3 アルドラーゼ
  • 最後に
  • 症例検討
  • 解説

第2章 治験の有害事象評価におけるカルテの見方

  • はじめに
  • 1. カルテとは
  • 2. 初診時のカルテの内容
  • 3. 再診時のカルテ
  • 4. 特殊な用語
  • 5. カルテから知りたいこと

第3章 治験の有害事象判定における併存疾患の取り扱いとその経時変動の解釈

第1節 併存疾患の取り扱い
  • はじめに
  • 1. 併存疾患とは
  • 2. 発生した事象の取り扱い
  • 3. 具体例
第2節 事象の経時変動の解釈
  • はじめに
  • 1. 有害事象の因果関係の判定
  • 2. 検査値の変動
  • 3. 具体例
  • 4. 的確な有害事象の判定のために

第4章 有害事象評価の実際 (1) – 因果関係,重篤度,既知・未知判定のポイント –

  • 1. 有害反応 (=副作用) の発生機序による分類とその特徴
  • 2. 予測性の評価:既知か未知かの判断
  • 3. 重篤度の評価
  • 4. 因果関係判定のポイント:判定の要因とGrading
  • 5. 因果関係判定のポイント:時間的関係の解釈
  • 6. 症例提示

第5章 有害事象評価の実際 (2) – 知っておくべき臨床検査値解釈のコツ –

  • はじめに
  • 1. 白血球 (White Blood Cell;WBC) について
  • 2. 肝機能検査
  • 3. 筋肉に関する有害事象

第6章 グローバルにおける有害事象評価と日本との違い

  • 1. 拝啓
  • 2. 有害事象評価における主要3要素
  • 3. 因果関係
  • 4. 重篤度
  • 5. 予測性評価
  • 6. 有害事象評価に関する判断基準

執筆者

  • 福地 邦彦 : 昭和大学 医学部 教授
  • 蓮沼 智子 : 北里大学 臨床薬理研究所 医学管理部長
  • 原田 和博 : 笠岡第一病院 診療部長
  • 臨床開発担当者 : 外資系大手製薬企業 医学博士

福地 邦彦

昭和医療技術専門学校

特任教授 / 医師

蓮沼 智子

北里大学
北里研究所病院
研究部
臨床試験センター

センター長 / 教授

原田 和博

笠岡第一病院

内科診療部長

出版社

お支払い方法、返品の可否は、必ず注文前にご確認をお願いいたします。

お問い合わせ

本出版物に関するお問い合わせは tech-seminar.jpのお問い合わせからお願いいたします。
(出版社への直接のお問い合わせはご遠慮くださいませ。)

体裁・ページ数

B5判上製本 169ページ

ISBNコード

ISBN978-4-86428-020-4

発行年月

2011年6月

販売元

tech-seminar.jp

価格

38,000円 (税別) / 41,800円 (税込)

これから開催される関連セミナー

開始日時 会場 開催方法
2025/2/17 リスクベースのGCP監査 オンライン
2025/2/17 GMP対応工場における設備・機器の維持管理 (保守点検) と設備バリデーションの実際 オンライン
2025/2/27 改正GMPを踏まえた医薬品品質システム (PQS) 構築と品質照査の実務・統計的手法の活用 オンライン
2025/2/27 「GMP監査マニュアル」の活用による効果的かつ効率的なGMP監査の実施と現場運用のポイント オンライン
2025/2/27 GMP違反とヒューマンエラーに対する教育訓練の考え方とQA視点による抑制・防止対策事例 オンライン
2025/2/27 改正GMP省令を踏まえたGMP適合性調査対応 効率的なGQP/GMP-QA連携とQA/QC業務範囲の明確化 オンライン
2025/2/27 GMP/GQP-QAが行うべき逸脱管理とCAPAの適切性の評価とチェックリストの活用 オンライン
2025/2/27 改正GMP省令で求められているGMP文書・記録の作成・管理のポイント オンライン
2025/2/27 少人数体制にも対応したGMP-QA業務・監査のポイントセミナー (全5コース) オンライン
2025/2/27 ヒューマンエラー・逸脱・GMP違反を防ぐSOP・製造指図記録書の作成とは? 教育訓練とは? GMP記録とは? オンライン
2025/2/27 バイオ医薬品における申請をふまえたCMCレギュレーション対応とCTD作成入門講座 オンライン
2025/2/28 FDA/EMAの早期審査・早期承認制度の課題と対応 東京都 会場・オンライン
2025/3/14 各種製剤におけるヒト経口吸収予測法と品質規格の設定 オンライン
2025/3/17 FDA/EMAの早期審査・早期承認制度の課題と対応 オンライン
2025/3/27 バイオ医薬品の原薬製造工程に関する承認申請書/CTD作成の留意点 オンライン
2025/3/27 ラボにおける監査証跡/レビューの項目・頻度・レベルと分析機器毎のレビュー例 オンライン
2025/3/28 海外当局によるGMP査察への準備と対応 オンライン
2025/3/28 試験室QCと信頼性確保を踏まえた分析法バリデーションの統計・基準値設定と分析法変更・技術移転時の同等性評価 (3コース) オンライン
2025/3/28 品質管理試験室にむけたQC点検と信頼性確保の対応 オンライン
2025/3/28 治験に関わるベンダーの要件調査と監査 オンライン

関連する出版物

発行年月
2022/6/17 経験/査察指摘/根拠文献・規制から導く洗浄・洗浄バリデーション:判断基準と実務ノウハウ (追補版)
2022/6/17 経験/査察指摘/根拠文献・規制から導く洗浄・洗浄バリデーション:判断基準と実務ノウハウ (追補版) (製本版+ebook版)
2022/3/31 疾患原因遺伝子・タンパク質の解析技術と創薬/診断技術への応用
2021/11/26 改正GMP省令で要求される「医薬品品質システム」と継続的改善 (書籍 + ebook版)
2021/11/26 改正GMP省令で要求される「医薬品品質システム」と継続的改善
2021/10/28 改正GMP省令をふまえた国内/海外ベンダー・サプライヤGMP監査 (管理) 手法と事例考察 (聞き取り・観察・着眼点)
2021/10/28 改正GMP省令をふまえた国内/海外ベンダー・サプライヤGMP監査 (管理) 手法と事例考察 (聞き取り・観察・着眼点) (製本版 + ebook版)
2021/10/11 抗ウイルス薬 (CD-ROM版)
2021/10/11 抗ウイルス薬
2021/9/22 パージファクター活用 (スコアリングと判定基準) 及びニトロソアミン類のリスク評価 (書籍版 + ebook版)
2021/9/22 パージファクター活用 (スコアリングと判定基準) 及びニトロソアミン類のリスク評価
2021/8/31 創薬研究者・アカデミア研究者が知っておくべき最新の免疫学とその応用技術
2021/8/26 薬事規制・承認審査の3極比較と試験立案・臨床データパッケージ/CMCグローバル申請 (製本版+ebook版)
2021/8/26 薬事規制・承認審査の3極比較と試験立案・臨床データパッケージ/CMCグローバル申請
2021/5/27 [Global] 治験/市販後での安全性情報の収集・評価・報告要否とPVベンダーコントロール (書籍 + ebook版)
2021/5/27 [Global] 治験/市販後での安全性情報の収集・評価・報告要否とPVベンダーコントロール
2021/3/30 経験/査察指摘/根拠文献・規制から導く洗浄・洗浄バリデーション:判断基準と実務ノウハウ
2021/3/30 経験/査察指摘/根拠文献・規制から導く洗浄・洗浄バリデーション:判断基準と実務ノウハウ (製本版+ebook版)
2020/6/30 米国での体外診断用医薬品の開発/審査対応 実務集
2020/4/27 各国要求及び治験環境と現地の実情