第1部. エピジェネティクス創薬のための構造・合成生物学
(2016年3月11日 10:30〜12:30)
エピジェネティクス (後成遺伝学) は先天的な遺伝情報に後づけされる化学修飾を扱う分野です。エピジェネティクスの異常はがんや生活習慣病などの疾病に関わることから、近年、創薬標的として注目を集めています。本講演では、エピジェネティクスの制御に向けて「構造生物学」と「合成生物学」のアプローチによる創薬技術の一端をご紹介いたします。
- エピジェネティクスの仕組みと制御
- エピジェネティクス制御の分子機構
- エピジェネティクス異常による疾患
- 創薬標的候補となるタンパク質
- 既存の承認薬と臨床開発品について
- エピジェネティクスの構造生物学
- エピジェネティクスを合理的に制御するための構造生物学
- ヒストン修飾酵素の制御の実例 (ヒストンメチル化酵素の阻害剤開発)
- ヒストン脱修飾酵素の制御の実例 (ヒストン脱メチル化酵素の阻害剤開発)
- ヒストン修飾認識因子の制御の実例 (BETタンパク質の阻害剤開発)
- エピジェネティクスの合成生物学
- エピジェネティクスを制御・理解するための合成生物学
- エピジェネティクスを精密に再現する研究の紹介 (技術の紹介)
- リジン修飾ヌクレオソームの再構成とその利用 (アセチル化とメチル化)
- DNA修飾ヌクレオソームの再構成とその利用 (CpGメチル化)
- まとめ
第2部. ヒストン脱メチル化酵素阻害剤の創製とその抗がん活性
(2016年3月11日 13:15〜15:15)
抗がん剤としてのヒストン脱メチル化酵素阻害剤を有機化学的な創薬手法により創製した。抗がん活性を示した阻害剤について、遺伝子発現解析結果などを基に、その抗がんメカニズムを考察する。
- ヒストン脱メチル化酵素
- Jumonji C domainを含むヒストン脱メチル化酵素 (JHDM)
- フラビン依存性ヒストン脱メチル化酵素 (LSD)
- ヒストン脱メチル化酵素とがん
- ヒストン脱メチル化酵素阻害剤の創製
- ヒストン脱メチル化酵素阻害剤の抗がん活性とそのメカニズム
- JHDM阻害剤の抗がん活性とそのメカニズム
- LSD1阻害剤の抗がん活性とそのメカニズム
第3部. エピジェネティック制御研究とその創薬応用 ~BET阻害剤など先発薬の知見を踏まえて~
(2016年3月11日 15:30〜16:30)
高齢化社会を背景に急増する老齢期の骨粗鬆症は、骨・関節などの運動器の障害を誘発し、高齢者の健康並びに社会活動を脅かす重大な疾患である。この運動器障害には、異常に活性化した破骨細胞による骨・軟骨破壊が原因としてかかわる。従って、破骨細胞を阻害する化合物は、運動器障害を防ぐための有効な治療薬候補となる。本講では、破骨細胞のエピジェネティック制御を標的とした創薬の有効性について概説する。
- 破骨細胞の代謝リプログラミングの実体と役割
- 骨代謝制御にかかわる破骨細胞
- 破骨細胞の細胞内代謝様式
- メチオニン代謝経路の代謝物S – アデノシルメチオニンを介した新たな破骨細胞制御
- 破骨細胞制御にかかわる代謝エピジェネティクスの重要性
- DNAメチル化制御
- 破骨細胞制御を司るDNAメチル化制御
- DNAメチル化制御と細胞内代謝との関係性
- 骨粗鬆症疾患におけるエピゲノム創薬の有効性
- 骨粗鬆症の現状
- DNAメチル化制御を標的とした創薬の現状
- DNAメチル化制御に対する阻害剤がもつ骨粗鬆症の治療効果
- BET阻害剤などのエピゲノム創薬の現状