薬物動態試験は、新薬開発の各段階 (探索・非臨床・臨床段階) に応じて、重厚にならない範囲で、着実にかつ迅速に行わなければならない。また臨床試験の段階で安全性や有効性の問題が大きくならないうちに薬物動態特性を的確に把握し、有効な手立てを打っていくことが大切である。
本講演においては、非臨床および臨床試験で実施される薬物動態試験のデータを、多角的に眺め、その新薬の開発の成功につなげるための必要な、薬物動態データの見方について、焦点を当て解説を行う。
第1部 前臨床薬物動態試験一般
第1章 研究開発の流れ
- 創薬研究・開発研究の流れにおける前臨床研究
- リード最適化における安全性・物性・動態試験の実施計画 (検討項目)
- 候補化合物の非臨床試験 (ADME試験) の実施計画 (試験項目と実施時期)
第2部 薬物動態特性の正しい見方
第1章 動態バラメータが指し示すもの (CLtot、Vdss、MRT)
- クリアランスと肝代謝
- 分布容積とタンパク結合
- 持続性
第2章 吸収性の評価とヒト予測
- Caco-2細胞を用いた膜透過性試験
- 溶解度と膜透過からみた吸収性評価 (吸収率のマトリックス表示)
- 不完全吸収の機構 (モデル解析)
- 吸収性改善:限界と可能性 (シクロスポリンの例)
- BCSの分類における数値的判断基準 (提案)
第3部 前臨床動態と臨床動態の照合
第1章 未変化体に着目したヒト動態解析
- 吸収性からみた線形性の検証 (不完全吸収を示した事例)
- 代謝からみた線形性の検証 (代謝の飽和、誘導を示した事例)
- 種さ (分布において大きな種さが見られた事例)
- 薬物動態変動 (遺伝子多型)
- 相互作用 (AUCの増加率が100倍を超える相互作用の事例)
第2章 代謝物に着目したヒト動態解析
- 代謝物の安全性に関する当局からのガイダンス
- 代謝物検索と安全性担保の確認 (非臨床試験との照合)
- ヒト特有の代謝物 (in vitro 試験からの予測)
- 代謝物の異状蓄積 (代謝物が生体成分と結合した事例)
第4部 臨床試験の結果を見据えた非臨床研究
第1章 Attritionの理由
- 臨床試験の各ステージにおける課題
- 毒性の分類と中止薬物の例
- 臨床試験 (PhaseIIb) に関する当局からのガイダンス
第2章 反応性代謝物に着眼した化合物の最適化
- 反応性代謝物を化学構造
- タンパク結合能のin vitro評価 (上市された医薬品の例)
- 血管障害の予測 (COX-II阻害薬の事例)