近年、化粧品には、サブミクロンからナノサイズの微細粒子、ナノエマルションなどが活用され、新たな機能性化粧品として注目されている。しかしながら、このような微粒子分散系は、時に「粒子そのものは小さいはずだが、微粒子としての機能がなかなか発現しない」、「溶液やスラリー中で機能が出ない」、「安定性に乏しく品質が保証できない」などの問題に直面する場合が多い。すなわち、一次粒子径の値より組成物内での均一性や分散状態が機能発現を左右する場合が多く、実用的には、原料の選定、処方検討ばかりでなく、素材固有の機能を最大限に引き出すためには、これまで以上に進化した製造技術が要求される。
　本セミナーでは、化粧品及び皮膚外用剤の製剤設計に焦点をあて、その基本技術である乳化・分散・溶解 (可溶化) と攪拌機、分散機の選択と活用について述べる。前半では、それらの基礎理論のおさらいとそれらを制御する諸因子の把握、後半では、特に分散方法、分散状態が大きく影響する事例を中心に、素材の機能を最大限に引き出すために、目的に応じた素材の選定及び分散工程の重要性と、乳化・分散・溶解技術に基づいた「ひと手間」、「ひと工夫」よって、機能が進化した事例について解説する。

1. 乳化・分散基礎理論のおさらい
   1. 表面・界面
   2. 界面に働く力 (界面張力)
   3. 界面張力を制御する物質
      1. 界面活性剤
      2. その他の両親媒性物質
   4. 身近な分散の例
   5. 乳化とは分散とは
   6. 乳化分散物の安定性
2. 溶解理論のおさらい
   1. 溶解とは
   2. 身近な溶解の例
   3. 乳化分散と溶解の相違点
3. 乳化の実際
   1. 既存の乳化法と乳化原理
   2. 乳化を左右する諸因子
   3. 乳化に用いられる機械類と実例
4. 分散の実際
   1. 分散の3要素と再凝集過程
      1. ぬれ
      2. 微細化 (解砕)
      3. 安定化
   2. 分散性の評価
   3. 分散に用いられる機械類と応用事例
5. 溶解の実際
   1. 難溶性薬物の可溶化
   2. 溶解性を左右する諸因子
   3. 溶解に用いられる機械類と応用事例
6. 化粧品・皮膚外用剤の特徴と乳化・分散・溶解の意義
7. 攪拌機、分散機の活用方法
   1. 用途別機種選択のヒント
   2. 機能向上の事例
8. まとめ
   1. 乳化・分散・溶解と製剤技術の今後