遺伝子組換え応用医薬品 (バイオ医薬品) では、生産細胞を培養し、産生される目的物質であるタンパク質を精製して原薬を製造する。この際、多くのバイオ医薬品では、目的物質・目的物質関連物質・目的物質由来不純物からなる不均一性を有する。このため、詳細な特性解析を行い、これらの関係性を明確に規定し、一定の品質が確保できることを提示する必要がある。
この「構造決定・特性解析並びに不純物」の説明は、重要品質特性に関連するため、検討に用いた試験方法はロット毎の品質管理に活用される。更に、バイオプロダクト固有の同等性・同質性の説明にも直接影響することから、これらの提示方法についても解説する。
- 構造決定と特性解析
- 目的物質の特定
- 遺伝子組み換えによる想定アミノ酸配列との同一性 (翻訳後修飾の有無)
- 一次構造の決定と立体構造の推定
- 分子量
- 糖鎖構造の同定と均一性 (不均一性) の説明
- 生物活性:有効性の根拠
- 免疫学的性質
- タンパク質含量
- 目的物質の不均一性と目的物質関連物質
- 一次標準物質の設定
- 不純物
- 目的物質関連不純物
- 製造工程由来不純物
- 測定方法の測定感度と製造工程での除去能 (クリアランス) の提示
- 不純物の安全性の説明と工程管理状況
- ウィルス安全性
- 製造工程での不活化方法と除去能力の提示
- 工程試験の必要性
- 微生物学的評価項目
- 製法変更時の同等性の判断根拠
不均一性を有するバイオプロダクトでは、詳細な特性解析を行って目的物質・目的物質関連物質・目的物質由来不純物を明確に規定する。この特性解析並びに不純物の項で提示した内容を踏まえて品質管理に不可欠な試験方法と管理基準とを設定することになる。
本セミナーでは、この管理手順について解説する。生産管理上必要となる分析法の精度を担保するための分析法バリデーションの提示方法並びにその結果を社内基準あるいは申請規格への反映方法についても、種々の試験方法のデータを用いて解説する。
- 規格及び試験方法
- バイオ医薬品の品質管理で考慮すべき基本的事項
- 規格設定の考え方:リスクを考慮したアプローチ方法
- 常用標準物質
- 一次標準物質との規格及び試験方法の差異
- 確認試験:プロダクト固有の同定方法の必要性と一次標準物質の活用
- 物質量・タンパク質量:品質試験の基準にふさわしい操作法とは
- 生物活性の根拠
- 原薬特有
- 確認試験:常用標準物質との比較 (ペプチドマップ、アイソフォーム)
- 純度試験 (工程由来不純物)
- 微生物学的混入汚染物質:微生物限度試験
- 原薬及び製剤
- 確認試験:常用標準物質との比較
- 純度試験 (目的物質、目的物質関連物質、目的物質関連不純物)
- タンパク質量
- 生物活性
- 微生物学的混入汚染物質:エンドトキシン試験
- 製剤特有
- 分析法バリデーション
- 試験法設定の妥当性説明と分析法バリデーションの目的
- 特異性
- 直線性
- 回帰直線の決定定数とy切片の評価
- 容量反応曲線の関数表示
- 検出限界と定量限界
- S/N比に基づく方法:工程由来不純物 (クロマトグラフィーとILAの例)
- 検量線のバラツキと傾きから算出する方法
- 真度:工程由来不純物と生物活性の例
- 精度:タンパク質量と糖組成分析の例
- 局方試験での適格性確認
- システム適合性試験と試験の成立条件
- 設定の必要性と留意点
- HPLC法の例
- システムの性能:カラムの理論段数やシンメトリー係数は有効か?
- システムの感度:分析機器の機種間差
- システムの再現性
- 生物活性試験の例