手術手技トレーニング臓器の3Dプリンターによる再現性向上技術
~低コストで視認性の高い材料を用いた臓器の開発事例~
東京都 開催
会場 開催
開催日
-
2016年12月12日(月) 10時00分
~
17時15分
プログラム
第1部. 3Dプリンターを活用した試作・開発現状と課題および手術手技トレーニング臓器の最新動向
(2016年12月12日 10:00〜11:30)
3Dプリンターで作製した患者一人ひとりの臓器立体模型を使い、手術のシミュレーションや練習、治療の計画などを立てる手術プランニングが必要である。
しかし、3D プリンターで使用する材料の樹脂は高価であり、従来よりも安価で、内部構造が視認しやすい実質臓器の立体模型を作製する手法を開発することが要請されている。
本講演ではそのための開発手法を概説し、開発課題をまとめる。
- 医療分野における、3次元造形技術の現状と、将来展望
- 臓器モデルを3Dプリンティングするための医用データ
- 医療分野において医用データ (CT・MRIデータ) を活用した3Dプリンターでの可視化モデル製作の事例を紹介
- 低コスト化手法・構造化の検討
- 臓器の機能を担う実質部の外面に沿うように形成し、内部のほとんどを空洞化し、樹脂材料の使用量の削減
- 3D造形を活用したトレーニング機器の製作事例
- 必要な形態を自由にデザインすることが可能な人工骨、このカスタムメイド人工骨
- 3Dプリンターを活用したデジタルモノづくり
第2部. 内視鏡下鼻内手術手技研修のための精密実体患者モデルの開発
(2016年12月12日 12:15〜13:45)
内視鏡手術は患者の負担は軽いが、執刀医には高度な技術が求められる。そこで、手技研修できる動物がなく医療現場でのOJTに依存せざるを得ない内視鏡下鼻内手術を対象に、臨床用の手術器具で実際に手術可能な患者実態モデルを2003年に開発した。
3次元印刷による精密な解剖構造と手術操作時の手応えを再現し、2006年より脳神経外科系学会のハンズオンにて採用されている。
- 研究の動機・背景
- 手術手技研修は OJT (On the Job Training) が主:未熟な技能による危険性が潜在
- 内視鏡下鼻内手術 (耳鼻科、脳神経外科) :練習できる動物なし、術者単独手術のためOJTの指導が難しい
- 手術可能な精密ヒト鼻腔モデルの開発
- 解剖構造:CT画像に写らない薄い骨壁の再現が必要
- 製造方法:複雑かつ独立セル構造が多いため型抜きできず、3次元印刷なら可能
- 素材:手術器具で手術操作した際の手応えを再現できるものを探索
- 結果:石膏粉材料による積層造形+樹脂皮膜形成 を選択
- 手術可能な精密ヒト鼻腔モデルの評価
- 解剖構造:CTに写っているものは再現
- 耳鼻科医師による官能評価:モデルのかたさは生体とホルマリン固定献体の中間
- 製造販売:2003年にベンチャー起業、2004年販売開始、2006年より脳神経外科系学会のハンズオンにて採用
- 顧客:学会、医療機器メーカー、大学、病院
- 今後の発展
- 3次元印刷技術の発展:骨・軟部組織まで一気に造形できるようになると期待される
- 手技研修から個別患者モデルによる手術リハーサルへ
- 課題:価格・時間のコスト低減
(2016年12月12日 14:00〜15:30)
第3部. 臨床医が求める臓器モデルの要件
臨床医が求める臓器モデルの要件としてはまず、画像診断データに基いて実際の構造や病変、そして周囲の脈管との関係を忠実に再現していることが最も重要。
そして手術手技の練習を視野に入れた場合には、見た目の構造だけではなく、生体膜の質感、組織の強さ、生理的な組織間の接着度などを忠実に再現することが重要であり、さらには、手技上のミスがはっきりと分かる仕組みが必要。
- 臓器モデルの必要性
- 時代は開腹や開胸による大きな侵襲の手術ではなく、体に負担の少ない内視鏡手術や血管内手術等へ移行している
- 急速なデバイスメーカーの高度な手術関連機器の開発
- 医療機関側は高度な医療機器の導入と手技技術の向上を求めている
- 動物愛護の観点から、動物を用いたシステムは今後廃止される方向
以上の問題を解決するにはリアルな手術手技の訓練・開発に適したシミュレーターが必要である
- 診断、治療戦略に必要な臓器モデル作成の基本
- 患者さんのDICOMデータから3Dプリンターで実物と構造が同じモデルを作成
- 手術手技の練習を前提とした臓器モデルの現状、問題点
- 現在の素材の多くは、シリコン、ウレタン、ゴム等であり実際の臓器の質感とはかけ離れており、手術手技の訓練に必要な各組織の強さなどを忠実に再現することが不可能。
- ポリビニルアルコール (PVA) を主素材とした限りなく生体に近いウェットシュミレーターの開発
- 人体部位とほぼ同じ切削感、縫合感、感覚臨場感を実現
- 機械的近似性、生体組織に近い反応 (切開、凝固)
- 安全性、生体吸収性、どこでも衛生的に利用および廃棄が可能
第4部. 視認性向上、低コスト化をめざした新規材料の開発
(2016年12月12日 15:45〜17:15)
われわれは、大日本印刷株式会社 (DNP) と共同で、安価で、従来型の臓器模型に比べてはるかに内部構造が見やすく、実際の術前シミュレーションに有効な独自の新規3D肝臓プリントフレームモデルを開発し手術に運用している。
- 最近の肝切除における手術シミュレーション・ナビゲーションについて
- 画像支援シミュレーション・ナビゲーション
- 3Dプリントを用いた手術シミュレーション
- 新規3D肝臓プリントフレームモデル開発
- 3Dプリントフレームモデルの必要性
- 3Dプリントフレームモデルのメリット
- 3Dプリントフレームモデルの今後の課題
- 新規3D肝臓プリントフレームモデルの手術シミュレーションとしての運用
- 3DプリントのためのMDCT撮像法
- 肝臓、脈管、腫瘍などの3Dモデリング
- 3Dモデルでのフレーム構築
- 3Dプリンティング
- 症例
- 3Dプリントフレームモデルを用いた実際の手術シミュレーション
- 今後の展開について
講師
小島 東作 氏
神奈川県立産業技術短期大学
制御技術科
講師
山下 樹里 氏
(国研) 産業技術総合研究所
人間情報研究部門
主任研究員
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主催
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