第1部 柔粘性結晶の開発と新規固体電解質としての応用

(2024年9月13日 10:30〜12:00)

　持続的な社会の構築に向けて、高エネルギー密度蓄電池、燃料電池、太陽電池などの電気化学デバイスの開発に対する社会的要請が高まっている。高効率な電気化学デバイスの開発に不可欠な要素材料の一つに電解質が挙げられる。現状は、電解液を電解質として用いているが、可燃性液体を含むため漏液や発火事故などの問題が生じる。電解液を固体電解質に置き換えることができれば、それらの問題を解消できるため意義深い。さらに、電気化学デバイスの大型化に伴い、より安全な電気化学デバイスの開発も推進されており、高性能固体電解質の開発は益々活発化している。
　本セミナーでは、固体電解質の新たな候補として柔粘性結晶について解説する。

1. 柔粘性結晶の基礎
   1. 柔粘性結晶とは
   2. 構造的特徴
   3. 非イオン性
   4. イオン性
   5. 合成方法
   6. アニオン交換法
   7. 酸エステル法
   8. 中和法
2. 柔粘性結晶の評価
   1. 熱的性質
   2. 相転移温度
   3. 熱分解温度
   4. 結晶構造
   5. SEM
   6. XRD
   7. 単結晶構造解析
   8. 分子運動性
   9. 固体NMR
   10. イオン伝導性
   11. インピーダンス測定
   12. 自己拡散係数
3. 固体電解質としての柔粘性結晶
   1. リチウムイオン伝導体
   2. ナトリウムイオン伝導体
   3. プロトン伝導体
   4. ポリマー複合体
   5. ナノファイバー
   6. 微粒子
• 質疑応答

第2部 有機金属錯体からなる柔粘性イオン結晶

(2024年9月13日 13:00〜14:30)

　本講座では、有機金属錯体からなる柔粘性イオン結晶に関して、その背景と基礎から応用に至る内容を平易に解説します。柔粘性結晶の相転移と動的挙動に焦点を当てつつ、イオン結晶からイオン液体に至る物質相の開拓に関する最近の研究成果を紹介します。有機金属錯体を用いた固体化学・液体化学の新しい可能性を探索します。

1. 柔粘性結晶の基礎
2. 有機金属錯体
   1. 有機金属錯体の基礎
   2. サンドイッチ錯体からなる柔粘性結晶
3. 有機金属系柔粘性イオン結晶
   1. 相転移と分子形状の相関
   2. 柔粘性イオン結晶相の発現条件
   3. イオン液体との関係性
   4. 物性・反応性の開拓
4. 有機金属系イオン結晶の動的挙動
   1. 分子形状と分子運動の相関
   2. イオン結晶相の動的挙動と反応性
5. 有機金属系イオン液体
   1. イオン液体の設計
   2. イオン液体の機能
6. イオン結晶からイオン液体まで
• 質疑応答

第3部 固体電解質に向けた柔粘性イオン結晶・分子結晶の分子設計

(2024年9月13日 14:45〜16:15)

　二次電池向け固体電解質の候補として、構成要素が「規則的配列」と「動的機能」を併せ持つ結晶性有機固体電解質への関心が高まっています。このような特徴を有する電解質材料として、我々は柔粘性イオン結晶や分子結晶に注目した材料開発を行っています。
　本講ではこのような材料の開発と固体中でのイオン拡散、二次電池への展開に関する研究例を紹介します。

1. 固体イオニクスの基礎
   1. 固体イオニクスのはじまり
   2. イオン結晶中の点欠陥
   3. 結晶性固体中でのイオン拡散
   4. ナノイオニクス現象
   5. リチウムイオン伝導体
2. 新しい有機系固体電解質材料:柔粘性イオン結晶と分子結晶
   1. 有機イオン柔粘性結晶について
   2. 有機イオン柔粘性結晶の合成と評価
   3. 有機イオン柔粘性結晶の構造と特性
   4. 分子結晶について
   5. 分子結晶の合成と評価
   6. 分子結晶の構造と特性
   7. 有機系固体電解質材料の課題と特性向上に向けた取り組み
   8. 有機系固体電解質の全固体電池への展開
• 質疑応答