基調講演『医薬品開発においてわが国に期待される役割と課題 – グローバルな視点から – 』
(2016年9月14日 10:30~11:30)
ICHをリードしてきたわが国の国際的な存在感が急速に薄れてきている。なぜなのか?近年、医薬品をめぐる環境は国際的に急激に変化している。その中で、欧米の製薬企業は生き残りをかけて変革を試みている。わが国には世界の新薬開発の一翼を担うことが役割として期待されているが、その期待に応えられるのか、わが国独自のやり方に固執しすぎていないか等、わが国の進むべき路は何かを考える。
- 日本は3極の一つとして、国際的な責任を果たしているか。認められているか。
- 日本は3極の一つとして、世界最先端の審査リスクをとる覚悟が行政にあるのか。
- 日本の安全対策の問題点は何か。定性型から定量型への大転換は可能か。
- 日本の職人的安全対策はグローバル開発の障害にならないか。
- 開発・審査から市販後までの一貫したライフサイクルリスクマネジメントの重要性は安全対策担当者に理解されているのか。
- 安全対策でリスクをとる覚悟は行政にあるのか。
- 先駆け審査指定制度に安全対策はついていけるのか。
- 再生医療推進の今後予想される課題は何か。
- メディカルアフェアーズ (MA) の重要性を日本の企業は理解しているか。国際的な流れから遅れてはいないか。
- ブロックバスター型開発から医療ニーズ対応型への転換はなぜ必要か。
- 新薬開発の大きな流れの方向転換にわが国はついていけるか。
- 患者主体の医療や開発・安全性に向けた国際的な動きに日本は対応できるのか。
- 国際的な医療技術評価 (HTA) 強化の動きに日本は対応できるのか。
- 国際的な希少疾病治療薬開発への動きに日本は対応できるのか。
- 国際的なワクチン開発にわが国は対応可能なのか。
- 免疫チェックポイント阻害剤開発はなぜ成功したのか。将来性は。問題点は。
- わが国の優れたDDS技術を如何に国際的な新薬開発に活かせるか。
- レギュラトリーサイエンスを如何に活かすか。
- 質疑応答
セッション1 『リスクに基づくモニタリング (RBM) の本質 :目標設定を誤っていないか?』
(2016年9月14日 12:15~14:30)
ICH-GCPの約20年ぶりの改定が進められている。倫理性、科学性の2本柱で構成されていたICH-GCPに「効率」という第3の柱が追加されたように見える。RBMの実装にあたり「効率」を目先の目標に据えることがRBMの誤った実装につながってしまう。本稿では、RBMが健全な形で導入できるために必要なRBMの本質の理解を目指す。
- 「当たり前品質」と「魅力的品質」
- 出口管理とプロセス管理
- RBMの究極の目標
- 治験参加施設の責任
- 施設のプロセスに質を作りこむ (Built-in Quality)
- 治験の質とは?
- クリティカルなデータとは?
- 無駄なデータ収集は罪深い
- 中央モニタリングの役割
- 施設の品質管理と中央モニタリング
- ALCOA再訪
- モニタリング計画のあるべき姿
- 施設が自ら率先して行う品質管理
セッション2
『Risk Based Monitoring (RBM) におけるデータマネジメント』
(2016年9月14日 14:45~16:45)
- Traditional modelとRBM modelの比較
- RBMにおいて、どのような体制、手順、文書が必要となり、データマネジメント業務がどのように変化するのか、従来のデータマネジメントのモデルと比較して解説する。
演者の実際の経験からRBMのモデルを説明する。
- プロジェクトにおけるリスクの特定と文書化
- RBMでは、プロジェクト開始時にリスクを特定し、リスクに応じたDMのアクションを設定する必要がある。
プロジェクトにおけるリスクをどのように特定するかについて概説し、代表的なリスクについて紹介する。
- データクリーニングの実施と注意点
- RBMの特徴の一つは、EDCデータの状態をタイムリーに捉え、分析し、必要なアクションをトリガーすることで、試験の運用の過程で変化していくリスクに対応することが可能となる点である。それを実現するためには、医療機関でのタイムリーなデータ入力、臨床、DMからの迅速なクエリー発行、回答が必要となる。
RBMを成功させる上でのデータマネジメントの視点から注意点を説明する。
- 実際のRBM試験から学んだこと
- 2本のRBM試験の構築、運用を通して得られた学びおよび今後の課題を紹介する。
タイムリーにデータクリーニングを進めていくためには、CRAに対して様々なレポートを提供して進捗をfacilitateしていく必要があること、DMではデータクリーニングの状況を頻繁に監視し、遅延が見られる場合には働きかけを行うこと等、データマネジメントとモニタリングが、従来と同様に一体となった治験の実施が試験の品質を確保するために重要であることを説明する。