超音波洗浄は、製造工程における重要なプロセスの一つであり、幅広い産業分野で利用されている。洗浄液である水に十分に高い音圧の超音波を照射すると、キャビテーションと呼ばれる発泡現象が生じる。超音波照射下の水中気泡は、洗浄面近傍で体積的に振動することから、洗浄面上に強い摩擦力が発生し、その結果として付着汚れが除去される。一方、気泡の振動が激しい場合、気泡崩壊時の高温高圧の形成により洗浄面を傷つける恐れがある。高効率かつ低エロージョン性の超音波洗浄技術の開発を目指すにあたり、超音波キャビテーション現象への基礎的理解は不可欠である。
　本セミナーでは、流体力学・音響学の基礎方程式に立脚し超音波キャビテーション現象の基礎を解説した上で、超音波洗浄プロセスの可視化事例を題材に、各種パラメータ (超音波周波数・音圧、溶存ガス濃度、水温など) が超音波洗浄プロセスの洗浄効率・エロージョン性に与える影響について議論する。

1. 単相媒質中の超音波の伝播
   1. 支配方程式
      • 質量保存
      • 運動量保存
   2. 波動方程式
   3. 音響インピーダンスと音響定在波
   4. 音響流
2. 単一の音響キャビテーション気泡の力学
   1. 均質キャビテーション初生
   2. 不均質キャビテーション初生と気泡核
   3. 球形気泡の運動方程式
   4. 気泡の共振現象と気泡の分裂
   5. 整流物質拡散による気泡核の成長
   6. 第1・第2ビャークネス力
   7. マイクロストリーミング
3. 音響キャビテーション気泡群の音響現象
   1. 均質気泡群モデル
   2. 音響波の分散
   3. 準静的過程における音速
   4. 気泡群存在下の音響流
4. 超音波洗浄における気泡の役割
   1. 音場の可視化 (シュリーレン法・アルミ箔を用いた簡易法)
   2. 気相・液相流動場の可視化 (PIV)
   3. 水中溶存ガス濃度と洗浄効率の関係
   4. 壁面近傍気泡の運動と付着汚れの除去
• 質疑応答