技術セミナー・研修・出版・書籍・通信教育・eラーニング・講師派遣の テックセミナー ジェーピー
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(2016年11月15日 10:30〜12:00)
細胞を用いた科学研究の発展に凍結保存技術の寄与は大変に大きい。凍結保存ができなかったら、ほぼ同じ性状を維持した再現ある研究が世界中でできることは不可能であった。つまり、細胞は増殖・複製すると、遺伝子の変異を避けることができないし、細胞を輸送することも凍結保存なしでは困難であった。細胞生物的研究を進めていく上で、細胞を保管、輸送する手段として、凍結保存は必須の技術である。 本講演ではマウスおよび霊長類ES/iPS細胞の凍結保存を中心にお話する予定である。
私の経験では、マウスES細胞は凍結などの環境に強い。通常のマウスES細胞培養培地に10% DMSO溶液による緩慢凍結法 (発泡スチロールの小さな箱に入れてマイナス80度でゆっくりと凍結) でも全く問題ない。それどころか、遺伝子導入後のマウスES細胞クローンを96や24ウェルプレートで培養した状態のまま、上記の凍結保存溶液により凍結し、遺伝子組換えの状態を確認後に解凍し、培養することが可能である。 ところが、霊長類ES/iPS細胞に通常の緩慢法を適用すると解凍後の回復率が著しく低い。そこで、初期胚の凍結保存で用いられるガラス化法が試みられ、解凍後の回復率は改善された。一般的なガラス化法ではプログラムフリーザー等の設備は必要であるが、その後、そのような設備を必要としないガラス化法が開発され、日本では普及していると思われる。しかし、このガラス化法には主に二つのデメリットがある。一つは、秒単位の迅速な作業が要求され技術の熟練が必要である。もう一つは、一般的に緩慢法で凍結した細胞はドライアイスで輸送可能であるが、ガラス化凍結細胞では液体窒素の容器で輸送する必要がある。そのため、新規の凍結法・凍結保存液の開発が望まれている。そこで我々は、まず凍結保護物質であるジメチルスルホキシド (DMSO) とヒト血清アルブミンに着目し、初代細胞のヒトリンパ球を用いてこれらの成分の最適化を行い、緩慢凍結法による凍結保存液を開発した。サルES細胞を用いて開発品の凍結・解凍後の回復率を検討した結果、高効率な凍結保存が可能であることが示された。さらに、凍結細胞をドライアイス上で24時間保存した後に解凍後の回復率を検討した結果、生着コロニーが十分得られることが確認できた。開発品により、操作が簡便で霊長類ES/iPS細胞の簡便・高効率な凍結保存が可能で、かつ凍結細胞をドライアイスで輸送できることが示された。また、開発品は異種成分が含まれておらず既知成分のみが配合されているため、霊長類ES/iPS細胞の基礎研究のみならず、産業応用の上でも有用であると考えている。
(2016年11月15日 12:40〜14:10)
iPS細胞をはじめとした再生医療向けの幹細胞の凍結保存に関する最新技術を概説する。
分化に影響があるとされるジメチルスルホキシド (DMSO) の代替物としての高分子系の凍結保護剤の開発およびその応用について、iPS細胞を含む幹細胞から幹細胞シートの保存まで詳細に解説する。
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