次世代環境自動車として有望な燃料電池自動車の更なる普及に向けて、そしてその主要システムである固体高分子形燃料電池 (PEFC) の低コスト化に向けて、白金をはじめとする高価な部材使用量の低減のみならず、高電流密度化による出力密度向上が極めて重要である。しかしながら現状では、その電極反応に必要な酸素、プロトン、電子が、十分に電極表面に供給されておらず、物質輸送の速度論的観点で、各種PEFC構成材料の機能向上や、構造最適化を図る必要がある。
　本講演ではPEFC の性能向上における課題と対策、内部現象・物質輸送研究に関する国内外の動向や明らかになった知見、また残されている課題等について述べる。

1. 本講演の位置付け
2. 固体高分子形燃料電池 (PEFC) の背景
   1. 燃料電池自動車とその周辺の動向
   2. 燃料電池の種類と原理
   3. PEFCの構成
   4. PEFCの発電特性と過電圧
   5. PEFC全体の内部現象
   6. 各構成部材の機能とその詳細
   7. PEFCの現状と課題
3. PEFC材料開発、反応機構研究の動向
   1. 電極触媒、担体
   2. 反応機構
   3. 電解質膜
4. PEFCおよび構成部材の内部可視化、構造解析技術の動向
   1. 可視化セルによる水挙動と酸素濃度分布可視化
   2. X線イメージングによる触媒層内現象解明
   3. 軟X線による触媒層内の液水挙動観察
   4. X線CTによるGDL、MPL内の液水挙動観察
   5. 中性子ラジオグラフィーによるガス流路内の液水可視化
   6. MPL、触媒層、アイオノマー構造観察技術
      • FIB-SEM
      • ETEM
      • AFM
      • X線CT
   7. 部材特性評価技術
      • ガス
      • 水透過性
      • ぬれ性
      • 水分量
   8. 熱輸送計測
5. PEFC反応輸送解析技術
   1. セル、スタック全体シミュレーション技術
   2. GDL内の液水輸送解析技術
   3. 触媒層内の反応輸送解析技術
   4. 電極表面周り、アイオノマー内の解析技術
6. 触媒層作製プロセス
   1. 基本的な作製プロセス
   2. プロセス高精度化、現象解明の必要性
   3. 作製プロセスにおける現象の詳細
   4. 研究動向
7. 多孔質電極部材の新規構造設計に向けた研究
   1. 計測・解析・理論の統合的評価に関する取組
   2. 酸素輸送
   3. 電子輸送
   4. 液水輸送
8. まとめと今後の展望