技術セミナー・研修・出版・書籍・通信教育・eラーニング・講師派遣の テックセミナー ジェーピー
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核酸医薬は、核酸あるいは修飾核酸が十数〜数十塩基連結したオリゴ核酸で構成され、タンパク質に翻訳されることなく直接生体に作用するもので、化学合成により製造される医薬品であると言われている。2022年12月時点において、日米欧合わせて16品目の核酸医薬が承認されており、従来の低分子医薬や抗体医薬では治療が困難であった希少疾患や難治性疾患に対する新たな治療薬として確固たる地位を築きつつある。一言で核酸医薬といっても、そこには構造や作用機序が異なる様々な種類が存在する。例えば一本鎖核酸であるアンチセンス核酸は、疾病の原因となる遺伝子のmRNAやpre-mRNAに配列特異的に結合し薬効を発揮する。翻訳過程を阻害して疾病を引き起こすタンパク質の生成を阻害するのみならず、配列設計や化学修飾の仕方を調節することで、スプライシング過程を制御することも可能である。siRNAは二本鎖のRNAより構成されており、RISCと呼ばれるRNA-タンパク質複合体を介して標的となるmRNAを切断し翻訳過程を阻害する。また核酸アプタマーは、その立体構造により標的分子を厳密に認識するため、核酸で作られた抗体様分子ともいわれている。このように、核酸医薬の種類は多岐にわたるが、いずれも化学合成により製造されるという点は共通である。
一方、mRNA医薬はその名の通り、標的タンパク質の遺伝情報をコードしたmRNAを治療薬あるいは予防薬として用いるものである。薬効を示すのはmRNAそのものではなく、投与したmRNAから翻訳されるタンパク質であるという点が核酸医薬とは異なっている。また、核酸医薬はその鎖長が十数から数十塩基程度であり化学合成によって製造することが可能であるが、mRNAは数百塩基から数千塩基と鎖長が長く一般的には化学合成ではなく酵素反応を利用したinvitro転写系により合成される。mRNA医薬のうち、抗原タンパク質を発現させることでその抗原に対する免疫を誘導するものがmRNAワクチンである。新型コロナウイルス感染症に対するmRNAワクチンが驚異的なスピードで開発され全世界で利用されるようになったことで、mRNAワクチンを含むmRNA医薬に対する期待は大いに高まっている。感染症に対するmRNAワクチンの他にもがんやその他の難治性疾患に対するmRNA医薬に関する研究開発が世界中で進められており、約100品目もの候補品が臨床試験段階にある。
核酸医薬とmRNA医薬は、その作用メカニズムや鎖長、製造法などは異なるものの、用いられている技術には共通する点も多い。例えば、核酸医薬もmRNA医薬も生体内での安定性や細胞内への移行性が課題となる。そのため、いずれにおいても、適切な化学修飾や人工核酸技術、標的臓器や細胞へ移行させるためのデリバリー技術の利用が必要不可欠となっている。こうした核酸医薬及びmRNA医薬の実用化を支える共通の技術については、これまで長く研究されてきた核酸医薬やその基盤を築く核酸化学、DDS研究の成果を、mRNA医薬にも利用することが可能である。また、両者の分析法についても共通した考え方や技術が用いられている。
本書では、第1章から第3章では「核酸医薬」を、第4章から第6章では「mRNA医薬」を取り上げ、それぞれの領域の第一線で研究開発を牽引する産官学の先生方に執筆いただいた。「核酸医薬」、「mRNA医薬」ともに、概論を紹介したのちに、それぞれの製造法並びに分析法を詳細にまとめている。さらに、人工核酸技術や配列設計法、デリバリー手法などの基盤技術開発に関する最新の研究成果を幅広く紹介した。また、本書の最後には核酸医薬・mRNA医薬の市場概況や製造支援の状況についても触れている。本書が核酸医薬及びmRNA医薬の共通点と相違点、そして現在の技術開発動向を理解し、今後の研究の方向性を考える上で読者の皆様の一助になれば幸いである。
最後に、ご多忙のところ貴重な時間を割き執筆いただいた先生方に心より感謝申し上げたい。
2022年12月吉日
阪大学大学院 薬学研究科
小比賀 聡
─RNAレベルでの生体制御─
井上貴雄
宮田完二郎
滝口直美
羽城周平、佐野坂真人、南海浩一
閨 正博
笠原 剛、岩本正史
西風隆司
唐澤 薫
高原健太郎
瀬崎浩史
廣瀬賢治
谷口陽祐
田良島典子、南川典昭
小林芳明、程久美子
清水太郎、高田春風、石田竜弘
吉岡祐亮
位髙啓史
吉田哲郎
榎 竜嗣
高木大輔
中島和幸
辻畑茂朝
高原健太郎
寺崎真樹
横尾英知、内田智士
秋田英万
大庭 誠
飯笹 久
乙竹真美、平岡陽花、阿部 洋
立花浩司
立花浩司
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