治験の現場で、カルテ閲覧を行いデータ解析や臨床医と議論をする際などに、様々な疑問が生じます。また、メディカルライティングにおいては、正確な疾患名や病態の表現が求められます。中でも臨床検査データは客観的であるが故、さらに科学的な表現が必須となります。
検査値の変動について「上がった」「下がった」と言うこと自体は正しいのですが、それが何に基づいて出現している現象かを理解せずに記載すると、細かなニュアンスの点で齟齬が生じる可能性があります。
臨床検査の結果は客観性がありデータそのものに意味があるのですが、解釈するにあたり、それぞれの検査の方法や原理から、異常値の出現機構を理解しておく必要があります。しばしば出会う疑問について、詳細に研修します。
検査総論
- Q1 基準値・基準範囲はどのように決めていますか。
- 基準範囲は、健常人がとりうる臨床検査値で、検査成績を判断する基本となっています。
多くの検査値が基準範囲と病態時の値の分布が重複するため、一般的には健常人集団のみを対象として基準範囲を設定して利用しています。
- Q2 生理的変動とは何を指しますか。また、生理的な変動因子にはどのようなものがありますか。
- 「生理的変動」との語は、頻繁に使用されます。本来、生理的とは、健康状態での身体の対応を指しています。
すなわち、健康人における性別、体位、食事、運動などによる検査値変動です。疾患が原因で一時的にダメージを負って異常値となり、その後正常に戻った際は、厳密には一過性の変動です。細かなニュアンスを整理します。
- Q3 臨床判断値とは何をさしますか。 病態識別値、治療目標値、カットオフ値の意味は。
- 異常値を見た際に、次に何を行うかを判断するものが、臨床判断値です。検査値の解釈法には様々あり、目的に応じてカットオフ値を決めます。
- Q4 採血法などの検体採取法と保存による検査値変動にはどのようなものがありますか。
- 採血に使用する器具や採血時の体位で検査値が大きく変わるものがあります。
また、採血後の検体の保存状態によっても大きく変動します。
異常な値を見た際に、検体採取から保存段階を考察可能な知識を得ます。
検査各論
- Q5 LDHの値が高値となりました。上昇機構を考えるために、他のどの検査項目を検討しますか。
- 血清LDH濃度は、様々な要因で変動します。LDHは細胞のエネルギー代謝に必須の酵素であり、特に多く含まれる細胞があります。
- Q6 AST 50 U/L, ALT 46 U/Lと軽度高値を見ました。何を考えますか。
- 肝疾患でない場合でも、AST, ALTの値は変動します。薬物の代謝機構を再考して、肝細胞の軽度なダメージ発生機構を整理します。
- Q7 BUN 45 mg/dl クレアチニン 0.8 mg/dLの結果が得られました。何を考えますか。
- 腎機能が低下していなくとも、軽度のBUN高値はしばしばみられます。BUN産生機構を理解したうえで、腎機能低下以外でのBUN上昇機構を整理します。
- Q8 血小板数が減少との結果が得られました。何を考えますか。
- 体内での血小板低下は身体にとって極めて重大な事象です。
検査の過程でも、血小板数低下との結果を得る原因があります。
- Q9 高ビリルビン血症を見た際、原因の鑑別はどのように行いますか。
- 高ビリルビン血症による黄疸は、肝・胆道系疾患や溶血性疾患でみられます。
肝胆道系の障害と溶血性副作用は最も代表的な薬物による有害反応です。
- Q10 溶血の原因検索のための検査はどのように行いますか。
- 溶血は、赤血球膜の異常によるもの、免疫学的機序によるものなど様々です。
免疫学的機序による溶血の検査のための抗グロブリン試験の原理を理解します。
- 質疑応答・名刺交換