有機分子の化学吸着によって形成される単層膜、Self-Assembled Monolayer, SAM、さらには多層集積膜に関する研究が、近年大きく進展し、基礎・応用の両面から注目されるようになった。SAMは、いわゆる自己集積化あるいは自己組織化と呼ばれる過程を経て形成される単分子膜であり、有機分子の化学吸着過程で固体表面上に形成される分子会合体である。吸着分子同士の相互作用によって会合体構成分子が密に集合し、分子配向と配列が高度に規則的な構造が、自発的に形成されていることが特徴である。
　本セミナーでは、自己集積化によるSAM形成、SAMの分子配列構造と物性、および、SAMを積層して作製する多層膜、すなわち、Self-Assembled Multilayerについて、さらには、膜厚を分子レベルで比較的簡易に制御できるこれらの分子薄膜の工学的応用について解説する。

1. 自己集積化単分子膜-Self-Assembled Monolayer
   1. 遷移金属表面へのSAM形成
   2. 酸化物表面へのSAM形成
   3. 水素終端化シリコン表面へのSAM形成
   4. SAMの多層化
2. SAMの分析方法
   1. 接触角と表面エネルギー測定
   2. 膜厚測定 (偏光解析,X線反射,AFM)
   3. 構造分析 (XPSとIR)
3. 有機シラン系SAMの気相成長
   1. 有機シランSAMの液相成長と気相成長
   2. 密閉型システムによる有機シランSAM被覆
   3. 気相成長アルキルシランSAMの欠陥修復
   4. アルキルシランSAMとフッ化アルキルシランSAM
4. 自己集積化分子膜による材料表面処理への応用
   1. アミノシランSAMによる無電解めっき前処理
   2. ガスバリア膜の表面改質
   3. ホスホン酸-ジルコニウム自己集積化積層防食被膜
   4. SAMによる密着性・接合性の改善
5. SAMのマイクロパターニング
   1. SAMの光パターニング
   2. 真空紫外光を利用したSAMのパターニング
   3. マイクロテンプレートとしての微細構造化SAM
6. まとめ
• 質疑応答