厚生労働省の「平成21年度病院経営管理指標」によると、病院の人件費比率は、比較的比率の低い一般病院ですら、医療法人の病院で54.3%、自治体病院で63.7%という数字が公表されています。ちなみに、財務省の「法人企業統計年報」では、主要企業の売上高対人件費比率は、平成21年度14.8%でした。このように、病院はまさしく労働集約型の産業です。
労働集約型の産業であるからこそ、なおさら、そこで働く人々の能力や意欲が組織の発展に大きく影響することは間違いありません。それにも関わらず、いまだに多くの病院において、明確な人事制度が整備されておらず、処遇の仕組みが不透明で、職員に病院への不信感を抱かせる要因の一つにもなっています。人材マネジメントの基本は、「個人への敬意と信頼」であります。人事考課や賃金決定の仕組みもなく、何となく職員の処遇が決められている状況では、とても職員との信頼関係を築くことはできません。まずは、職員にオープンにできる人事の仕組みづくりが必要です。
そこで、今回も、いくつかの事例などをお示ししながら、具体的な人事制度構築の方法について解説致します。

• 1.病院経営の現状と人事制度構築
  • (1)病院経営の現状と課題
  • (2)病院マネジメントの課題の再認識
  • (3)病院人事制度の全体像の考察
• 2.病院の等級基準と人事考課のあるべき姿
  • (1)病院に適した等級基準
  • (2)人事考課の要素(成績、業績、情意、能力)
  • (3)人事考課制度としての目標管理
  • (4)昇格・昇進基準の明確化
• 3.病院の賃金制度のあるべき姿
  • (1)病院の賃金表で見られる課題
  • (2)賃金表の作り方(サラリースケールと賃金表の作成)
  • (3)賃金移行時に注意すべきこと
  • (4)病院における生活能力給(年齢給)のあり方
  • (5)賞与支給のあるべき姿
• 4.医師に適した人事の仕組み
  • (1)医師にこそ人材ビジョン
  • (2)医師にはシンプルな役割等級制度
  • (3)医師の人事考課で大切なこと(業績・理解・支援・プロセス・アセスメント)
  • (4)診療科別目標管理とマネジメント(結果を責めるのは誰でもできる)
  • (5)医師の賃金水準と最近の傾向
  • (6)医師の賃金制度(頑張っている先生に報いるには)
  • (7)その他、考えられること
• 5.質疑応答