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実戦 ディジタル信号処理

MATLABによる

実戦 ディジタル信号処理

~MATLABでプログラム例を示し、その実行結果を確認しながら、理解を深める~
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ご案内

 ディジタル信号処理には、確立された理論体系がある。ディジタル信号処理での代表的な処理概念を挙げれば、畳み込み、フーリエ変換、z 変換、フィルタ、等であろう。それらは、サンプリングを共通して行う前提において、相互に関係し合っている。したがって、ディジタル信号処理は、個々の処理概念を単独で理解することが困難である。すべての処理概念が理解されたとき、ディジタル信号処理全体が理解できよう。
 本書では、MATLAB を使って、ディジタル信号処理の全体像が把握できるように解説してある。MATLAB は、ディジタル信号処理の概念を理解するのに適した多くの処理機能を含み、特に、高速にフーリエ変換を行うアルゴリズム、FFT、が関数一つで表現できることに象徴されるように、その記述の簡潔さゆえに、研究開発上の大幅な効率向上が図れる。本書では、このMATLAB でプログラム例を示し、その実行結果を確認しながら、理解を深めて行けるように工夫してある。読者には、是非添付のCD に含まれるMATLAB プログラムを実行しながら、本書を読み進めることをお奨めする。
 内容的には、多くの物理現象をアナログ信号として捉えられることから、アナログ信号をディジタル信号へ変換するサンプリングからスタートする。ただし、上述したように、どこからスタートしても、その一つの項目のみにおいて、処理概念の理解は困難である。よって、このサンプリングにおいても、サンプリング定理の具体的導出はスキップし、後述するフーリエ変換の項目で理解を深めることとする。1章のMATLAB の簡単な使い方に続く2章では、サンプリングから、離散時間信号、離散時間システムへと繋げ、畳み込み処理を述べるが、ここでも、とかく表面的な認識のみにとどまる畳み込み処理を、その導出あるいは利用においても概念を解きほぐす。また、実際にフィルタリングで利用する差分方程式との違いを多面的に記述する。続く3章では、ディジタル信号処理での2つの重要な変換、z 変換とフーリエ変換を述べる。ここでは、それぞれの変換の物理的な解釈を考え、それぞれの変換の役割、意味を捉える工夫をする。4章は、ディジタルフィルタについてである。フィルタ構成の違いからFIR フィルタとIIR フィルタに場合分けし、それぞれの代表的なフィルタ設計法を紹介し、それぞれの方法の特徴を捉える。また、本来ディジタルフィルタの設計に課せられる問題設定から、実際に設計されたディジタルフィルタによるフィルタリングでの処理結果までの相違を、時間領域および周波数領域の双方から深く考える。最後の5章では、統計的信号処理についてその基礎から応用までを述べる。ここでは、特にスペクトル推定と適応信号処理に着目し、それぞれの目的、処理概念、具体的な処理方法までを平易に述べる。また、重要なアルゴリズムの導出には紙面をさき、詳しく説明する。
 ディジタル信号処理は、理工系の大学の学部学生が修得すべき科目として設定されることが多い。したがって、多くの大学で科目設定をしている。しかしながら、半期の14、15 回程度の範囲で網羅できる内容は限られる。この意味で、本書の5章の統計的信号処理は、大学よりむしろ大学院で修得すべき発展的内容と考えられる。しかしながら最近では、雑音として混入してくる不規則信号の取り扱いが重要視される傾向にあり、不規則信号を取り扱う信号処理としての統計的信号処理が注目されている。このような事実に鑑み、本書では、統計的信号処理でも特にスペクトル推定や適応信号処理の概念への内容的な発展を試みているわけである。統計的信号処理は、学術的にはここ数年目覚ましい発展を続けている。1次元の信号理論を基礎に、多次元の信号処理、また多チャネルの信号処理への拡張から、多くの工学的応用が検討されている。本書の中での統計的信号処理は、紙面の都合当然これらをすべて追うことはできないが、これらの発展的内容が理解できる程度のレベルに記述してあるつもりである。統計的な信号を把握するための注意点を述べつつ、統計処理の考え方、そして具体的な処理方法へと導いている。
 添付されているCD-ROM には、フォルダCD-ROM がある。そのフォルダ内にフォルダchap1 からchap5 までがあり、各章ごとに記述されているMATLAB のファイル (Mファイル) が収められている。MATLAB のパス設定をこのフォルダCD-ROM およびそのサブフォルダに設定して頂き、MATLAB プログラムをご利用頂きたい。
 MATLAB の普及にともない、作今では高度な関数プログラムが世の中に出回るようになってきている。しかしながら、基礎なくして、それらの高度な信号処理アルゴリズムの理解は困難である。本書が、難解と言われるディジタル信号処理概念の理解の一助となれば、著者にとってこれ以上の喜びはない。
 最後に、本書を書く機会を与えてくださったトリケップスの田上透氏、また本書の図の作成に御協力頂いた田代和義、竹川英樹両氏にこの場を借りて感謝の意を表する。

目次

第1章 MATLABの使い方

  • 1.1 基本演算
    • 1.1.1 Mファイル
    • 1.1.2 MATファイル
  • 1.2 グラフィックス
  • 1.3 Toolbox の利用

第2章 離散時間の信号とシステム

  • 2.1 サンプリング
  • 2.2 離散時間信号
  • 2.3 離散時間システム
    • 2.3.1 入出力関係
    • 2.3.2 システム分類
    • 2.3.3 システム構成
    • 2.3.4 線形時不変システム
    • 2.3.5 畳み込みの性質
    • 2.3.6 差分方程式

第3章 ディジタル信号処理のための変換

  • 3.1 z変換
    • 3.1.1 z変換の性質
    • 3.1.2 差分方程式のz変換
    • 3.1.3 逆z変換
    • 3.1.4 伝達関数の分解
  • 3.2 離散時間フーリエ変換
    • 3.2.1 離散時間フーリエ変換の性質
    • 3.2.2 z変換と離散時間フーリエ変換の関係
    • 3.2.3 離散時間システムの周波数応答
  • 3.3 離散フーリエ変換

第4章 ディジタルフィルタ

  • 4.1 ディジタルフィルタの特性
    • 4.1.1 線形位相フィルタ
    • 4.1.2 線形位相フィルタの零点配置
  • 4.2 FIRフィルタの設計
    • 4.2.1 窓関数法
    • 4.2.2 最小自乗法
    • 4.2.3 線形位相フィルタによる入出力特性
  • 4.3 IIRフィルタの設計
    • 4.3.1 双一次変換法
  • 4.4 周波数変換

第5章 統計的信号処理

  • 5.1 不規則信号
    • 5.1.1 信号と雑音
    • 5.1.2 相関関数
    • 5.1.3 パワースペクトル
  • 5.2 スペクトル推定
    • 5.2.1 ノンパラメトリック法
    • 5.2.2 パラメトリック法
    • 5.2.3 部分空間法
  • 5.3 適応信号処理
    • 5.3.1 適応アルゴリズム
    • 5.3.2 適応フィルタの応用

執筆者

島村 徹也

埼玉大学
大学院 理工学研究科

教授 / 情報メディア基盤センター長

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体裁・ページ数

B5判 121ページ

ISBNコード

ISBN978-4-88657-265-3

発行年月

2010年6月

販売元

tech-seminar.jp

価格

49,800円 (税別) / 54,780円 (税込)

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