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筋ジストロフィーにおける有効性のある薬剤と治療薬開発

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筋ジストロフィーにおける有効性のある薬剤と治療薬開発

~他の希少疾患に応用できる動物モデルを用いた治療法開発の方法論とは~
東京都 開催 会場 開催

開催日

  • 2015年5月8日(金) 10時30分 15時30分

プログラム

第1部. 動物モデルから読み解く治療薬開発

(2015年5月8日 10:30〜12:00)

 デュシェンヌ型筋ジストロフィー (DMD) は、X-染色体連鎖性遺伝形式をとり、ジストロフィンの欠損を原因とする遺伝性筋疾患であるが、未だ筋変性・壊死を阻止する決定的な治療法はない。
 現在、最も注目されている治療法としてアンチセンス・オリゴヌクレオチド (AON) を用いたエクソン・スキップ誘導療法がある。
 我々は、ジストロフィン遺伝子のイントロン6のスプライシング変異によりエクソン7が欠失し、ジストロフィンの発現を欠く筋ジストロフィー犬に対し、モルフォリノで合成したAONを投与した結果、ジストロフィン遺伝子のエクソン6と8のスキップにより、全身骨格筋でジストロフィンが発現し、骨格筋障害の進行が抑制されることを明らかにした (Ann Neurol, 65: 667-676, 2009) 。
 またより多くのDMD患者に応用可能な、ジストロフィン遺伝子のエクソン51スキップに関して、エクソン52を欠失したマウスモデル (mdx52マウス) に対し、モルフォリノの全身投与による広範なジストロフィンの発現と骨格筋障害の改善効果を明らかにした (Mol Ther, 18: 1995-2005, 2010) 。我々は、これらの成果に基づき、企業と共同開発契約を結んだ上で、ジストロフィン遺伝子のエクソン53スキップを目的として、医師主導治験に向けた準備を進め、早期探索試験を行うことができた。
 我々が、動物モデルを用いて進めてきた治療法開発の方法論は、希少性疾患に対する治療法開発のひな形として、他の疾患にも応用が可能と考えられる。

  1. 筋ジス医療の歴史
    1. 筋ジストロフィーとは
    2. ジストロフィン欠損症
  2. DMD/BMDに対する治療法
    1. 治療法開発のストラテジー
    2. 代表的な動物モデル:筋ジストロフィー犬
  3. エクソン・スキップ療法
    1. モルフォリノを用いたエクソン・スキッピング
    2. アンチセンス化合物の標的とその種類
  4. アンチセンス・オリゴ治療の有効性と限界
    1. アンチセンス・オリゴ全身投与の効果
    2. アンチセンス・オリゴ治療の限界
  5. トランスレーショナル・リサーチ
    1. 筋ジストロフィー患者登録制度 (Remudy)
    2. 筋ジストロフィー臨床試験ネットワーク (MDCTN)
  6. 臨床試験
    1. 新薬開発の全般的な状況
    2. 臨床試験の進展状況

将来の見通し

  • 質疑応答

第2部. 現状の治療薬において筋ジストロフィーに有効性のみられる薬剤

(2015年5月8日 12:45〜14:15)

 治療法のないと考えられてきた筋ジストロフィーであるが、重篤なDuchenne型筋ジストロフィー (DMD) の治療を目ざして、様々な治療法が開発されている。
 本講演では、DMDの治療に焦点を置いて、現状の治療薬による筋ジストロフィーの治療に有効性のみられる例を紹介する。

  • 筋ジストロフィー
  • Duchenne型筋ジストロフィー
  • 根本治療
  • 遺伝子治療
  • エクソンスキッピング誘導治療
  • 細胞治療
  • リードスルー誘導治療
  • 補充治療
  • ユートロフィン発現治療
  • 病態改善治療
  • 抗炎症剤
  • 抗筋萎縮剤

  • 質疑応答

第3部. 筋ジストロフィーの現状の薬物治療の問題点と今後期待する治療薬像

(2015年5月8日 14:30〜15:30)

 デュシェンヌ型筋ジストロフィー (DMD) は筋ジストロフィーの中で最も発症頻度が高く、重篤な遺伝性疾患である。
 ステロイド剤などの進行を遅らせる薬剤に加え、根本治療を目指したエクソン・スキップ治療、遺伝子治療、幹細胞移植治療が検討されている。

  • 筋ジストロフィーは、筋病理学的に筋線維の変性、壊死を主病変とした進行性の筋萎縮、筋力低下を示す遺伝性疾患群である。
  • 中でもデュシェンヌ型筋ジストロフィー (DMD) は、X染色体連鎖性遺伝形式を示し、最も重症かつ発症頻度 (出生男児4,500人に1人) が高い。
  • 原因遺伝子はXp21に局在するジストロフィン (DMD) 遺伝子であり、筋形質膜に局在するジストロフィンをコードしている。ジストロフィンは骨格筋ではアクチンとジストログリカン複合体に結合し、細胞膜の安定化に関与していると考えられている。また、心筋、平滑筋、神経組織などにも発現している。
  • DMDでは、ジストロフィン遺伝子の変異 (欠失、重複、点変異など) によりアミノ酸の読み枠がずれるため、ジストロフィンの発現が欠損している。一方、ジストロフィン遺伝子に変異があるもののアミノ酸の読み枠が保たれる場合には、不完全ながらもジストロフィンが発現するために、より軽症の病型であるベッカー型筋ジストロフィー (BMD) となる。
  • ジストロフィンが欠損することにより、筋形質膜の安定化が損なわれるほか、細胞内カルシウム濃度の上昇により様々なプロテアーゼが活性化されることや、細胞膜に結合しているタンパク質の発現・機能異常が病態に関与していると考えられている。
  • DMDの約1/3の患者は突然変異により発症するために、遺伝相談が必ずしも有効ではないとされている。そこで、筋ジストロフィー患者
  • 家族団体から根治的治療法の開発が望まれてきた。
  • 従来から、副腎皮質ステロイド剤がDMDの筋機能改善や歩行期間の延長を示すことが指摘され、本邦では2013年に同薬剤が保険収載された。しかし、副作用の点から投与量、投与開始時期、投与期間についての課題が多い。また、その他に筋機能の改善薬が複数提案されており、一部では治験が行われている。
  • 根治的治療法としては、ウイルスベクターまたは人工染色体を用いた遺伝子治療、幹細胞移植治療などが検討されているが、実現のためには克服すべき課題は多い。
  • 一方、人工核酸であるアンチセンス・オリゴヌクレオチドを用いてアミノ酸の読み枠を修正し、ジストロフィンの発現回復を図るためのエクソン・スキップ治療の開発および治験が進められている。
  • 本講演では、DMDの病態・発症機序について述べた上で、薬物治療、臨床応用が期待されているエクソン・スキップ治療、リード・スルー治療、ウイルスベクター等を用いた遺伝子治療、および幹細胞移植治療の有用性と問題点について概説したい。

  • 質疑応答

講師

  • 第1部
    • 武田 伸一 氏
  • 第2部
    • 松尾 雅文 氏
  • 第3部
    • 中村 昭則 氏
  • 武田 伸一
    (独)国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター長
  • 松尾 雅文
    神戸学院大学 総合リハビリテーション学部
    教授
  • 中村 昭則
    信州大学医学部附属病院 難病診療センター
    教授

会場

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東京都 品川区 西五反田2-29-5 日幸五反田ビル8F
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主催

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