製作委員会を組織した映画製作方式は、今や、劇場用映画ばかりでなく、TVアニメーション映画においても、その製作資金調達手段としてすっかり定着した感がある。
　しかし、これほどまでに広汎に普及しつつも、この製作・利用契約については、その法務的側面と実際の事業スキームに関わる契約実務の側面の両面にわたり、深く検討される機会は思いのほか少なかったと思われる。
　本セミナーでは、今や日本の映像コンテンツ取引の根幹を支える契約といっても過言ではないこの製作委員会製作映画の製作・利用契約の現状と課題について問題点を整理・共有し、これに関わるすべての事業者の叡智によって、豊かな映像コンテンツの製作環境を創造していく契機としたい。

1. 【講演】製作委員会契約の現状と法的分析

青山綜合法律事務所 パートナー 弁護士
照井 勝 (てるい まさる)氏

(2012年3月14日 14:30～15:20)

　今日、邦画、テレビアニメの製作において製作委員会は殆ど必須の存在となり、製作委員会以外の事業スキームを見つけることが困難であると言っても過言ではない。
　しかしながら、その寄る辺となるべき製作委員会契約は、メンバー間の信頼に大きく依存する形で作成・運用されており、法的には極めて脆弱な側面があることは否めない。
　第一部では、主として慣行に基づき誕生・発展してきた製作委員会契約を法律というドライな視点から分析し、実務的には必ずしも認識されていない負の側面をあぶり出すと共に、製作委員会が代替性のない事業スキームなのかという問題意識を提示したい。

• 1. 製作委員会とは何か―「信」と「不信」
• 2. 法的に見る製作委員会の光と影
• 3. 実務的に問題となった法的課題
• 4. 本当に製作委員会しかないのか?

2. パネルディスカッション

(2012年3月14日 15:30～17:00)

テーマ

映画共同製作の現状と今後の課題
～TVアニメーション映画を事例に～

　TV放送60年の歴史の中で、積み重ねられてきたTV局と映画製作プロダクション間の映画の製作委託方式は、いま大きな変革期を迎えている。いわゆる「局:編成発注」から「製作委員会」方式への転換である。
　とりわけTVアニメーション映画については、新たに企画・製作されるものの殆どがこの方式に依っている。
　そこで、この第二部では、まず、そのビジネススキームと契約実務・権利運用の実態を多角的に検討し、そこに残された課題があるとすれば、どのような解決策があるかを考えたい。

論点

• 1 .局編成発注方式から製作委員会方式導入への背景事情
  • 広告不況を受けた編成・制作費予算の削減・減少傾向/機動的編成
    (視聴率)戦略への支障/スポンサーソースの限定/高額製作費(一般
    番組制作費対比)/コンテンツビジネス戦略としての製作費投下という発想
• 2. 製作委員会方式のビジネススキームと問題点
  • 「価値の最大化」は図られているか (何を「価値」とするかの共通価値観の有無)
  • 各権利運用条件の妥当性(窓口手数料の有無・料率、控除経費、設定権料・料率)
  • 他社の権利管理条件も自己の権利管理条件も客観的かつ公正取引の視点からみて妥当か
• 3.著作権法の理念と契約実務慣行
  • 「製作者」と「制作者」
  • 「発意」と「責任」という概念の再確認
  • 著作権の「帰属」という考え方・表現の再検討
  • 制作対価と譲渡対価という発想の不在
  • 「局印税」・「制作者印税」・「成功報酬」それぞれの論拠を考える
• 4.解決されるべき課題
  • 創造のサイクルを絶やさないために何が必要か

• 司会
  • 青山学院大学大学院 非常勤講師 斎藤 汎司 氏
• パネラー
  • 青山綜合法律事務所 パートナー 弁護士 照井 勝 氏
  • (株)テレビ東京 アニメ局 局長 川崎 由紀夫 氏
  • 一般社団法人 日本動画協会 著作権委員会 委員長 宮下 令文 氏